不動産売却において支払われた手付金の仕訳はどうなる?
商品を売買するときには、商品やサービスの代金の一部として、手付金や内金を前もって支払うことがあります。
不動産売却においても手付金などを支払う場面がありますが、この場合の会計処理や仕訳などはどのようになるのでしょう。
支払った「手付金」はどの勘定科目を使う?
買主は不動産を購入するに先立ち、代金の一部を支払って後で不動産を受け取る権利を得ます。そのため、支払った額は流動資産である「前渡金」という資産勘定を用いて記帳します。
例えば雑誌などを定期購読したときや事務所の資料など、継続して支払う必要のある費用の代金を前払いしたときは「前払費用(資産)」で計上します。
支払う用途や金額などが確定されていない場合、概算で支払うなら「仮払金(資産)」を使うことになります。
不動産売買の手付金など、商品やサービスを受け取る前に支払った代金の一部を計上するときに使うのは「前渡金」です。
前渡金で計上することになる代金には、不動産売買契約に伴う解約手付などの手付金、店舗や事務所などの内装工事を依頼したときの工事着手金、前金や内金、予約金、さらに前払いする代金のうち、前払費用や仮払金にならない代金などです。
具体的な手付金に関する仕訳
例えば、不動産の売主から土地1,000万円、建物2,000万円の不動産を購入するに先立って、代金の1割を手付金として現金で支払ったときの仕訳は次の通りです。
借方 : 前渡金 300万円 貸方 : 現金300万円
後日、銀行で残代金決済と不動産の引き渡しを行い、残りの2,700万円を普通預金口座から振り込んだ場合の仕訳は次の通りです。
借方 : 土地 1,000万円 貸方 : 普通預金 2,700万円
建物 2,000万円 前渡金 300万円
不動産売買契約が解除になった場合は?
不動産売買契約を結んでも、売主が物件を引き渡しできないケースもあれば、買主が代金の残りを支払うことができないケースもあります。
その場合、売主側の都合であれば手付金の2倍を買主に支払うこと、買主側の都合なら手付金を放棄することで不動産売買契約は解除できます。
仮に、買主の資金難で残りの代金が支払えなくなり、手付を放棄して不動産売買契約を解除することになった場合、手付金は個人事業主なら経費、法人なら損金の扱いとなります。
その場合の仕訳は次の通りです。
借方 : 雑損失 300万円 貸方 : 前渡金 300万円
買主が手付金を放棄したときの雑損失は、売主に対しての補てん金の意味を持ちますので、資産譲渡などの対価には該当しません。そのため、消費税は不課税の取引となりますので注意しましょう。