農地の納税猶予の特例を利用すれば結果的に税金が免除される?
2019/01/17
お金のこと
相続や贈与した土地が「農地」の場合、土地の面積は広いことで相続税や贈与税など、課税される税金の額も高くなりがちです。
税金を納付する資金がなければ相続した農地を処分して納税資金を作る必要がありますが、そうなると農地を引継いでも農業を続けることはできなくなってしまいます。
そこで、農地を引継ぐ後継者が農業を続ける場合や、一定要件を満たした状態で農地を貸し出すという場合など、特例により農地に課税される相続税や贈与税を猶予させることを可能としています。
相続税や贈与税が猶予されるというより免除になる?
納税が猶予されるということは、税金の支払いが先延ばしになるだけで、いずれは支払わなければならないと思うかもしれません。しかし、実際には「猶予」ではなく「免除」になる特例でもあります。
ただし、最初の申告で納税猶予の要件に該当することと、その後、納税猶予が取り消しになる要件に該当しないことが重要になります。
また、贈与税は全額が猶予されますが、相続税は全額が猶予されるわけではないという違いも理解しておく必要があります。
相続税の場合、算出した本来の相続税と、農業投資価格に基づき算出した相続税の差額が猶予の対象です。
農業投資価格は農業に使用する前提での売買価格なので、通常の宅地評価額より低い金額になると理解しておきましょう。
納税猶予の制度の目的
相続税の納税猶予は、後継者が農業を続けることを保護することを目的としているので、農業投資価格に基づいた税額以外の部分が猶予されます。
そして、次世代に早期に農地を移転できるように、贈与税も納税猶予されるというわけです。
納税猶予の仕組み
農地の贈与税の納税猶予を受けている中、贈与した方が亡くなると、贈与対象となった農地は相続したとみなされますので、今度は相続税の課税対象になります。ただし、要件を満たすことで相続税の納税猶予の特例が適用されます。
贈与税の納税猶予が適用されていなくても、相続で農業を引継ぐことにより、相続税の納税猶予の特例が適用されます。
相続税の納税猶予の特例が適用されるために、亡くなった方、相続人、農地、それぞれに設けられた要件を満たすことが必要です。
□被相続人の要件
亡くなった方(被相続人)の要件として、次のいずれかを満たすことが必要です。
・亡くなる日まで農業を行っていた場合
・生前に農地を一括贈与していた場合
・亡くなる日まで、障がいや病気などで農業を続けることができなくなったことを理由に、他人に農地を貸し付けていた、または市街化区域外の農地を規定に基づく事業に貸し付けていた場合
□相続人の要件
相続人も同様に、次のいずれかの要件を満たすことが必要です。
・農業を相続税の申告期限までに引継ぎ、継続して農業を続ける場合
・農地などを生前一括で贈与され、贈与税の納税猶予の特例を適用させていた場合
・相続税の申告期限までに市街化区域外の農地を規定に基づく事業に貸し付けた場合
などです。
□農地の要件
そして、納税猶予の特例の対象となる農地は、亡くなった方が農業を行っていた、または一定の要件のもとで貸付を行っていた農地で、次のいずれかの要件を満たすことが必要です。
・相続税の申告期限までに遺産分割が行われている農地である場合
・贈与税の納税猶予の特例を適用していた農地である場合
・相続が発生した年に亡くなった方から生前一括贈与されていた農地である場合
納税猶予の特例が適用されない農地もある
農地であっても、三大都市圏の特定市(区)の市街化区域内の場合は注意が必要です。
生産緑地地区内や田園住居地域内にない農地は適用外となります。生産緑地地区内でも、買取の申し出があった農地や、特定生産緑地の指定または指定の延長がされていない、もしくは解除された農地は適用されません。
相続税の納税猶予を続けるための注意点
相続税の納税猶予の特例は3年ごとに税務署に提出して継続の届け出を行う必要があります。
ただし、農地を相続した相続人が亡くなった場合や、相続人が次の後継者に生前一括贈与した時など、結果的に相続税は免除されます。生前一括贈与の場合、次の後継者が相続税の納税猶予を適用させることができるからです。
ただし、相続した農地を譲渡や貸付、転用、耕作放棄などした場合や、農業をやめた場合など、猶予されていた相続税を納めることになるので注意しましょう。