備えるべき災害の種類
人々の安全や生活を脅かす様々な災害。マイホームの購入・建築や賃貸住宅など、住まいの観点においても災害への備えは重要な課題です。
予防や対策の効果が見込める類の災害
住環境に被害をもたらす災難の中には、ご家庭で防災や対策を実施することで、損害を抑えられるタイプもあります。まずはそういった類について見ていきたいと思います。
△火災
家具や建物に火が燃え移って発生する火事や延焼。住宅・家財への損害のみならず、人命にも重大な危機を及ぼすおそれがあります。
その発生原因は主に火の不始末や電気配線周りの不備が主です。
- ●調理時には火が周囲に燃え移らないよう注意
- ●コンセントに溜まったホコリの除去
- ●電化製品のコードが断線しないよう注意
以上のような点に警戒することで、発生リスクの大幅減少が図れます。
△風災
台風や突風など強風によって引き起こされ、風力そのものあるいは飛来物の衝突により、人や物に危害を加えてしまいます。
被害を防止するは、天気予報から事前に情報を得、前もって暴風対策を施すことが効果的です。
- ●風に飛ばされそうな物はあらかじめ固定しておく。
- ●建物の弱い箇所は前もって補強。
以上のような対策で被害拡大を食い止められます。
地形や地盤が関連する災害
時として自然災害は、上記で示した種類とは違い、人間の力ではどうしようもないレベルの災厄をもたらす場合もあります。そういった類の災害と因果関係が深い要素としては、地形や地盤など、土地に関する要因が挙げられます。
ある種の災害に対し土地自体が脆弱であった場合、その上に建てられた住宅がいくら堅固であったとしても、甚大な被害を受けかねないというわけです。建物に強固な防災設備が備わり、ご家庭内で充分な対策が取られていたとしても、普段通りの日常生活を営めなくなると言っても過言ではありません。
そのような土地的要素が深く関わってくる災害として、以下の種類が挙げられます。
△地震
地球内部の地殻の活動によって地下の岩盤にずれが生じ、その影響で地上に激しい揺れが発生する現象である地震。発生源すなわち震源地における地震の強さはマグニチュードという単位で表され、揺れの大きさ(震度)は、震源地からの距離や地盤の状態によって変化します。
建物に破損や倒壊などの被害が及び、場所によっては地割れ、高低差のある地形では崖崩れ、埋立地などの軟弱な地盤では液状化現象や地盤沈下が発生する場合もあります。それに付随して交通や水道光熱通信などが麻痺状態に陥ってしまいます。
また2次災害として、送電設備の破壊などを原因とする火災が発生し、揺れ方によっては津波が発生してさらなる被害を及ぼすおそれもあります。加えて揺れが断続的に起こる余震が頻発すると、被害が拡大しかねません。
△洪水
甚大な降雨量により、通常陸地である土地が水没する水害の一種。それが洪水です。住宅にもたらす被害としては、建物や家財に損害を及ぼす床上・床下浸水などが挙げられます。流れが伴う場合には、人や物を押し流し、人身事故・物的損壊の危険性が高まります。
発生しやすい場所としては、地上への降水が流れ込みやすい低い土地が挙げられます。また川などの水場にも降水が流入し易く、河川の増水・氾濫によって河川付近にも重大な被害を及ぼします。
それ以外にも、地表がアスファルトやコンクリートなどで舗装され、水が地面に浸透しにくくなっている地域では、都市型水害の発生も懸念されます。都市化が進んだ区域では、下水管や雨水管が整備され排水機能を併せ持つのが一般的です。しかし、その排水能力を超える降水量に達してしまうと、地面が水没し洪水と同様の被害が発生してしまいます。
△津波・高波・高潮
海に面した地域や、海抜(海水面に対する地面の高低差)が低い地域では、海面及び波の高さによって水害が引き起こされるケースもあります。そのような災害としては、津波、高波、高潮などが挙げられます。
津波は、地震や火山活動で生じた地殻内部の力が海水に加わることで、数cmから数10mの高さの波が、数100m~数kmの波長で発生する現象です。波の奥行きが長く、海そのものがせり上がり進んでくる状態と言っても過言ではありません。そのため、高い津波が地上に押し寄せると、その地域全体の建造物その他一切が破壊される規模の極めて大きな災厄がもたらされてしまいます。
高波は、低気圧発生などの気象条件により、大きな波が海岸付近に打ち付ける現象を指します。海沿いにある物や建築物を破損させ、人がいた場合には水難事故に繋がってしまうおそれもあります。
台風による気圧低下、暴風に伴う海水の吹き寄せ、満潮の時間帯、そういった条件が重なって発生するのが高潮です。潮位の高い満潮時に併せて低気圧状態により海水面が通常より吸い上げられ、陸地の海水が侵入して水没被害をもたらします。暴風や大波が押し寄せる中の水没となり、人や家屋に多くの被害が生じてしまいます。
△土砂災害
主に、水害や地震の影響で発生する土砂災害。その種類には、崖崩れなどの斜面崩壊、高い場所の地面が低い場所に滑落する地すべり、多くの土砂が河川に流れ込み下流域へ押し寄せる土石流、などが挙げられます。被害が広範囲に渡るおそれもあり大変危険です。
災害に強い土地の5つのポイント
前項で見てきたような、地震や水害など、土地の状態に関わる災害。それらは、発生そのものを回避することが望めません。ゆえに事前にそのリスクを把握し、事前に避難など発生時の対策を立てておくことが重要です。
その際に役立つのが、ハザードマップです。自然災害が起こった際、その被害範囲を地図上に表したハザードマップ、別名・被害予測地図。これを参考に、居住地域にどのような危険性があるのか前もって知っておくことで、災害に対する備えに役立てることができます。
また、マイホームの購入および建設時や、その他引っ越し先を決める際にも、ハザードマップの利用が有効です。これにより、購入物件あるいは借りる物件に、自然災害時どのようなリスクが起こり得るのか事前に把握できます。それを考慮に入れて購入や契約の判断材料とすれば、災害発生要素も視野に入れながら将来設計が立てられることでしょう。
物件の購入や建設を含む不動産取引において、その土地にまつわる災害に関して事前に認識しておくポイントとしては、以下の5つが挙げられます。
ポイント1:地震への強さ地盤を調べる
日本全国どの場所においても、大きな災害をもたらす危険性が否定できない地震。その被害の大小は、地盤の強さに左右される場合もあります。震度が同じ状況下では、軟弱な地盤よりも硬質な地盤の方が、揺れの抑制効果が現れるわけです。
地盤の強弱は主に、その土地を形成する土壌によって判別されます。粘土質の土壌や盛土された土地は地盤が弱く沈下しやすい特徴があり、砂の地質は地盤的に良好と見做されるものの、液状化のリスクを抱えているとされています。
一方、礫や火山灰を主とする地質は、硬質地盤と判断されるのが一般的です。しかし、地盤の強度は、地表の土壌だけで判断されるものではありません。地中では表層と地質が異なっている可能性があり、地震や水害などでは地下土壌の影響を多く受けやすいわけです。
そういった理由から、ハザードマップの確認と共に、土壌や地形を判別できる地図による確認も併せて行うことが有効と言えます。なお、地盤や地質の確認は、地震以外の水害や土砂災害など、土地に関係する自然災害リスクを把握する上でも有益です。地震のみならず他災害も視野に入れながら調べることも重要です。
地理院地図を見る
地質や地形を調べる際に便利な地図としてはまず、国土地理院が作成している土地条件図が挙げられます。その地図では、平地や丘陵地などといった地形区分が色分けされており、その地形がどのような種類の土から構成されているか、判別することが出来ます。
しかし、造成された分譲地などで盛土がなされている場合、その状態が地図に反映されていない場合も考えられます。そういった可能性も考慮に入れ、現状の土地がどのような状態なのか調べることも併せて行ったほうがより確実と言えます。
古地図を見る
地盤の強弱を判断する際、現在の地図と過去の地図すなわち古地図を重ねて見ることも有効です。現状の土地の状態は、地目という使用目的ごとの土地の種類によって分類されています。これによって、住宅地用の土地なのか農地なのか区別されているわけです。
しかし場合によっては、過去に田んぼや湖沼などのように地盤の緩い土地であった場所が、現在の地目では宅地となっているケースもあり得るでしょう。かつて軟弱地盤であった影響が今なお地下に残っている可能性も考えられるわけです。
そういったリスクを明らかにする上でも、古地図による調査は重要と言えます。古地図を閲覧する方法としては、その地域の図書館に問い合わせるのが一般的です。しかし場所によってはインターネットから調べることも可能です。たとえば関東平野の場合、NARO「農研機構」というWebサイトなどからも確認することができます。
他にも、インターネットで古地図を調べたい場合、その地名に「迅速地図」というワードを付け加えて検索すると、該当古地図が見つかる可能性もあります。迅速地図とは、明治時代初期から中期あたりに当時の軍部によって作成された簡易的な地図です。
現在の地目に相当する土地利用法についても記録されているため、地盤の強弱について調べる古地図としても有効と言えるでしょう。
ポイント2:河川の氾濫や洪水の危険性を調べる
洪水や河川付近の水害についても、事前にハザードマップで確認するとこが可能です。その地域に住む前段階で危険性を把握しておき、その上で購入や入居を判断することが先決と言えます。
◆河川氾濫発生時の対策
いくら頑丈な住宅でも、河川の氾濫による濁流に巻き込まれてしまっては、住人の方々の安全確保がままなりません。深刻な状況に陥る前に、安全な場所への避難を図るのが賢明です。
◆都市型水害発生時の対策
排水設備が整えられた地区であっても、想定以上の降水量に達してしまうと、都市型洪水が発生してしまいます。被害が甚大ともなれば家屋が水没するまでに水位が上昇してしまうため、早めの避難が肝要です。
◆河川氾濫・都市型水害時の避難
水害発生時の水は低い場所に向かって流れます。その性質を踏まえ、避難の際は標高の高いルートを通って安全な場所へ逃れることが、安全を守るポイントです。ハザードマップを活用し、前もって適切な避難経路を検討しておくことが重要です。
ポイント4:津波・高波・高潮の危険の有無を調べる
地震発生直後に発生するケースが多い津波や、台風に伴って発生する高波・高潮など、海水による水害は海に面した地区にしか発生しないと思われがちです。しかし実際は、通常なら海水が届かない場所にまで被害が及びます。
とくに大津波の場合、海岸線から数km離れた地域にまで押し寄せてくるおそれがあります。居住場所を決める際、内陸部であったとしても、海抜が低い土地に関してはリスクを留意しておくべきと言えます。
ポイント5:避難経路を確認する
地震・水害・土砂災害はそれぞれ特徴に併せて、ハザードマップを参照することにより、避難経路が確認できます。それと併せて、実際に自らの足で避難経路を歩いてみることで、避難途中の被災リスクを減少させることに役立てられることでしょう。
自宅が被災を免れたとしても、災害によって電気・水道・通信といったインフラ環境が破損し、使えなくなる事態も想定されます。そういった局面に備えて非常食や防災グッズなどの備蓄を普段から心がけておくことも大事なポイントと言えます。
まとめ
以上のように、人命や住まいの安全を脅かす災害の特徴について、それぞれ確認してまいりました。それに併せて、被災の回避がとくに困難と言える土地に関わる災害に関して、避難時および居を構える際、事前に認識しておくべき事柄についてご紹介してまいりました。
地震をはじめ、自然災害はどこにでも起こり得る事態です。発生時のリスクや対処方法などを事前に踏まえながら、居住場所を決定することが重要と言えます。