目次
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結論
先に結論から申し上げますと、家を再建築できる土地があり、なおかつ生活環境を変えたくない場合は、住み替えよりも建て替えの方がおすすめです。それらの理由も合わせて、詳しく見ていきましょう。
建て替えについて
建て替えとは、今ある家を取り壊して一から建築工事を行うことです。建て替えにはさまざまな条件があり、条件を満たしている家でなければ建て替えを行うことができません。
建て替えを行うには幅が4m以上の道路に対し、土地が2m以上接している必要があります。救急車や消防車などがスムーズに土地へ入れるようにするため、このような条件が定められています。この条件を満たしていない場合は、再建築不可物件となります。
再建築不可物件とは家を取り壊して更地にしても、再度その場所に新しい家を建築することができない土地のことです。都市計画区域と、準都市計画区域のみに再建築不可物件は存在します。
建て替えを検討している場合は、今ある家が再建築不可物件に当てはまらないのかよく確認することが大切です。
建て替えのメリットとデメリット
まず、建て替えを行うメリットやデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
建て替えのメリット
建て替えでは今ある土地へ新居を建築するため、土地を探す手間や費用を省くことができます。一般的に土地探しにかかる期間は4ヶ月~12ヶ月程度とされており、納得のいく土地が見つからない場合はそれ以上の期間がかかります。
建て替えでは土地探しの手間が省ける分、速やかに建築を進めることができます。また建て替えはこれまでの生活環境を維持できるため、人間関係や生活環境の変化による精神的な負担などを減らすことができます。
例えば子どもがいる家庭の場合は、転校に伴う手続きや子どもの精神的な負担などを回避することができます。また近所の人との付き合いもこれまでと変わらないため、新たな人間関係を構築していく必要もありません。
建て替えのデメリット
建て替えの一番のデメリットは、引っ越しに伴う負担が大きいということです。建て替えでは今ある家→仮住まい→建て替え後の新居へと移動が必要なため、2回引っ越しをすることになります。
建て替えでは工事が終わるまで4ヶ月~6ヶ月程度かかるため、工事期間中は仮住まいに住む必要があります。仮住まいの物件がなかなか見つからないこともあるため、仮住まい探しに手間を取られる場合もあります。
このような引っ越しの負担に加え、金銭面においても負担がかかる可能性があります。建て替えでは固定資産税・不動産取得税・解体費用・引っ越しに伴う費用・建物滅失登記など、さまざまな税金や費用がかかります。
建物滅失登記とは、建物の取り壊しを行った場合に必要な申請のことです。登記にかかる費用は4万円程度とされており、調査依頼をした業者によって異なります。
また上記でも紹介したように、再建築不可物件の場合は建て替えを行うことができないため注意が必要です。
住み替えについて
住み替えとは、今の住宅から賃貸物件・中古住宅・購入した住宅などへ引っ越して住む場所を変えることです。マイホーム売却後に新しいマイホームを購入して住むなど、住み替えの形はさまざまです。
不動産取引が必要な引っ越しを行う場合に、「住み替え」という言葉が使われます。実家への引っ越しなど、不動産取引が必要ない住居の変更では「住み替え」の言葉を使わないことがほとんどです。
また結婚・出産・就職・転職など、ライフステージに合わせて住み替えを行う人が多い傾向にあります。
住み替えのメリットとデメリット
それでは住み替えを行うメリットやデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
住み替えのメリット
住み替えは既に完成している物件へ引っ越しをするため、仮住まいが必要ありません。仮住まいへの引っ越しがないため、物件探しなど引っ越しに伴う負担を抑えることができます。
解体費用などもかからず、引っ越しに伴う費用も建て替えを行うより少なく済みます。また住み替えでは今住んでいる家を売却し、売却で得た費用を次に住む家の購入費用に充てることができます。
中古住宅などを購入する場合は、新しい家を建築するよりも費用を抑えることができます。自身のライフステージに合わせ、住む場所を選べるのも住み替えの魅力の一つです。
住み替えのデメリット
住み替えでは、新居に住む前に今の家や土地を売却する必要があります。一般的に一戸建ての住宅は、売却できるまでに3ヶ月~11ヶ月程度かかるとされています。場合によっては、それ以上の期間がかかることもあります。
すぐに売却できれば問題ありませんが、なかなか売却できない場合は長期間売却活動をすることになるため手間を取られます。売却時には、住民税・譲渡所得税・印紙税・仲介手数料・ローンの一括返済費用・抵当権の抹消費用などがかかります。
新居購入時にもさまざまな費用がかかるため、金銭面での負担も考えられます。また住み替えでは生活拠点が変わるため、新たな生活環境に適応していく必要があります。転校や近所の人との付き合いなど、人間関係や生活環境がこれまでとは大きく変化します。
生活環境の変化や新しい人間関係の構築など、精神的な面においても負担がかかる可能性があります。生活拠点の変化により、病院や買い物先なども新たに見つける必要があります。
また住宅ローンが残っている場合は、一括で返済する必要があります。住宅ローンについては、下記で詳しく見ていきましょう。
住み替えと住宅ローンについて
住み替えにおいて、一番大きなデメリットとして考えられるのは住宅ローンの問題です。一般的に自己資金がない場合は、家を売却して得たお金でローンを一括返済します。住み替えにおいても、ローンが残っている場合はこの方法で返済をします。
住み替えを行う際、ローンが残っている家の売却よりも先に新居を購入する場合は注意が必要です。住み替えでは、新居購入と家の売却時期を合わせることが重要になります。
時期を合わせなければ、新しく購入した家のローンに返済できていない残りのローンが上乗せされます。つまりローンが残っている状態で新居を購入すると、残っているローンと新居のローンの二つを支払っていくことになります。
新居を購入する前に家を売却してローンを一括返済しておけば、ローンの支払いが二重にならずに済みます。ですがどうしても新居購入と家の売却時期を合わせることが難しい場合は、住み替えローンやダブルローンを利用することになります。
では住み替えローンとダブルローンについて見ていきましょう。
住み替えローン
返済できていないローンがある場合、住み替えローンを利用すればローンの返済に充てるお金を金融機関から借りることができます。また新しい家の購入費用も借りられるため、ローンを二重に組む必要がありません。
残りのローンと新しい家のローン、二つの支払いを一つにまとめて行うことが可能です。住み替えローンを利用すれば、ローンが残っていても住み替えを行うことができます。
ダブルローン
ダブルローンとは、返済できていないローンと新しい家のローンをそれぞれ支払っていく方法です。ローンの返済が二重になるため、毎月の出費にも影響が出てきます。
そのためダブルローンは毎月の支払い額が調整できる住み替えローンよりも、金銭面の負担が大きいと考えられます。ダブルローンを利用する場合は、よく調べて慎重に検討しましょう。
建て替えと住み替えの費用比較
ここでは、建て替えや住み替えにかかる費用について詳しく見ていきましょう。それぞれどのような費用がかかるのかを理解し、どちらを行うか選択する際の参考にしてください。
建て替えにかかる費用
建て替えにかかる費用と、各費用の相場は下記のようになります。
●引っ越し費用が約20万円(家賃5万円・敷金1ヶ月・礼金2ヶ月の物件を借りた場合)
●仮住まいの費用が約50万円
●解体と地盤調査費用が約110万円~
●新築住宅建築費用が約2640万円(坪60万円×40坪+消費税10%で計算した場合)
●地鎮祭と上棟費用が約15万円
●滅失登記・所有権保存登記・表示登記など、登記にかかる費用が約20万円
●銀行ローンの手続き費用が約5万円(金融機関によって、金額は異なる)
●火災保険30年分の保険料が約60万円(保険の種類によって、金額は異なる)
●2500万円を金融機関から借りた場合、住宅ローン保証料が約50万円(借入額の2%程度)
住み替えにかかる費用
住み替えにかかる費用と、各費用の相場は下記のようになります。
●売却金額4000万円の場合、不動産仲介手数料が税込み約138万6000円(売却金額の3%+6万円)
●銀行ローンが1000万円残っている場合、抵当権抹消登記費用が約4万円
●譲渡益課税が約61万円(長期譲渡で、300万円高く売却できた場合)
●土地の費用が約2000万円
●2000万円の土地を購入した場合、土地の所有権移転登記費用が約30万円(登録免許税も含む)
●2000万円の土地を購入した場合、不動産取得税と不動産仲介手数料が約100万円
●引っ越し費用と地盤調査費用が約10万円~
●駐車場や敷地境界ブロックなど、外構工事の費用が約100万円
譲渡益課税は、家と土地が購入時の金額よりも高い金額で売れた場合に課税されます。また以下の費用に関しては建て替え時と同じ条件で計算した場合、同じ相場価格となります。
●新築住宅建築費用
●地鎮祭と上棟費用
●滅失登記・所有権保存登記・表示登記など、登記にかかる費用
●銀行ローン手続き費用
●火災保険料
●住宅ローン保証料
3000万円の家を建てた場合のシミュレーション
下記の表は、2500万円のローンを借りて3000万円の家を建てた場合にかかる費用のシミュレーションです。
建て替えのシミュレーション
項目 |
費用相場 |
備考 |
引越し費用 |
約20万円 |
10万円×2回 |
仮住まい費用 |
約50万円 |
※1 |
解体・地盤調査費用 |
約110万円~ |
|
新築住宅建築費用 |
約3000万円 |
※2 |
地鎮祭・上棟費用 |
約15万円 |
|
登記費用 |
約20万円 |
滅失、表示、所有権保存登記 |
銀行ローン手続き費用 |
約5万円 |
金融機関によって異なります |
火災保険料(30年分) |
約60万円 |
※3 |
住宅ローン保証料 |
約50万円 |
※4 借入金額の約2%程度 |
合計 |
約3330万円~ |
|
※1 家賃5万円で敷金が1ヶ月、礼金が2ヶ月かかる物件を半年間借りた場合で試算
※2 坪単価60万円 × 45.45坪 + 消費税が10%で試算
※3 金融機関によっては、住宅ローン申し込み時に義務付けする場合がある。費用は保険の種類によって変わります。(住宅ローン加入期間中の火災保険の加入)
※4 金融機関によっては住宅ローンの分割払いに含めるケースもあります。その場合は諸経費には該当しません。
住み替えのシミュレーション
項目 |
費用相場 |
備考 |
不動産仲介手数料 |
約136万円(税込) |
売却金額の3%+6万円(売却金額4000万円の場合の試算) |
抵当権抹消登記費用 |
約4万円 |
銀行ローンが残っている場合にかかります(1000万円残っている場合) |
譲渡益課税 |
約61万円 |
土地と家が購入金額より高く売却された場合にかかる税金(300万円高く売却・長期譲渡の場合の試算) |
土地費用 |
約2000万円 |
※1 |
土地の登記費用※1 |
約30万円 |
所有権移転登記費用(登録免許税含む) |
土地購入諸経費※1 |
約100万円 |
不動産仲介手数料・不動産取得税 |
引越し費用 |
約10万円 |
10万円×1回 |
地盤調査費用 |
約10万円~ |
|
新築住宅建築費用 |
約3000万円 |
※2 |
地鎮祭・上棟費用 |
約15万円 |
|
外構工事費用 |
約100万円~ |
敷地境界ブロックや駐車場工事代 |
登記費用 |
約20万円 |
滅失、表示、所有権保存登記 |
銀行ローン手続き費用 |
約5万円 |
金融機関により異なります |
火災保険料(30年分) |
約60万円 |
※3 |
住宅ローン保証料 |
約50万円 |
※4 借入金額の約2% |
合計 |
約5601万円~ |
|
※1 2000万円の土地を購入した場合の概算
※2 坪単価60万円 × 45.45坪 + 消費税が10%で試算
※3 金融機関によっては、住宅ローン申し込み時に義務付けする場合がある。費用は保険の種類によって変わります。(住宅ローン加入期間中の火災保険の加入)
※4 金融機関によっては住宅ローンの分割払いに含めるケースもあります。その場合は諸経費には該当しません。
リノベーションという選択肢もある
ここまで紹介してきた建て替えや住み替え以外に、今ある家を「リノベーション」するという方法もあります。リノベーションとは、大掛かりな工事を行って今ある家の価値や性能を新築の時よりも向上させることです。
リノベーションでは、空間デザインの改良・内外装や間取りの変更・壁の補修などを行います。似たような言葉として「リフォーム」も挙げられますが、リフォームでは壁紙の貼り替えやユニットバスの入れ替えなどの小さな工事を行います。
リノベーションのメリットとデメリット
リノベーションのメリット
リノベーションをすると、築年数の古い家であっても資産価値(土地の価値や建物の価値)を高めることができます。ライフスタイルや、生活環境に合わせて暮らしやすい家に変えることができます。
リノベーションは中古の住宅やマンションが対象のため、新築物件よりも選べる地域や物件の種類が豊富です。また新しい家を建てるよりも費用がかからず、金銭面の負担が比較的少ないのもリノベーションのメリットです。
リノベーションのデメリット
リノベーションは物件選び・計画・住居審査・工事などの段階を踏んで行われ、工事も長期間に及びます。そのため実際に住み始めるまでには時間がかかり、すぐに住み始めたい人や忙しい人にとっては不向きな可能性があります。
リノベーションの物件選びでは、耐久性や耐震性に注意する必要があります。1981年に耐震基準の見直しが行われたことで、建築基準法が改正されました。これにより法が改正される前に建築された家と、改正された後に建築された家では耐震性が異なります。
築年数が古い物件を選ぶ際は、耐震性についてよく確認しておく必要があります。またリノベーションの場合、一般的な住宅ローンを利用することができません。ローンを組む場合は、住宅ローンよりも金利の高いリフォームローンなどを利用することになります。
まとめ
今回は、家の住み替えや建て替えなどについて簡単にご紹介しました。住み替えや建て替えなどを行う場合、まずは今の状況や家族の気持ちなどについて整理してみましょう。
今の家や環境に対する不安・改善したい部分・変えたくない部分・将来についてなど、今の家を今後どうしていきたいのかを明確にすることが大切です。
不安や改善したい部分の一例として、耐震性の心配・建物の老朽化問題・間取り変更・部屋の用途変更・断熱機能が低いことによる冬場の光熱費上昇などがあります。今住んでいる家に対し、不安に思うことや改善したい部分がないか一度考えてみましょう。
また、今の家の中で残しておきたい部分はないのか・学校はどうするのか・今後別の家に引っ越す予定はあるのかなど、変えたくない部分や将来についても家族とよく話し合って明確にしておく必要があります。
どんな暮らしがよいのかを明確にすることで、自分たちに合った方法を選択することができます。