
日本の空き家問題は、すでに個人の所有問題を超えて社会全体の課題となっています。総務省の住宅・土地統計調査によれば、全国における空き家数はおよそ850万戸を超えており、人口減少と高齢化の進行とともにさらに増加する見込みです。空き家を放置することで発生する問題には、老朽化による倒壊リスク、不法侵入や放火、害虫・害獣の繁殖、景観の悪化などがあり、近隣住民とのトラブルに発展するケースも珍しくありません。
さらに、「特定空き家」に指定された場合には、固定資産税の軽減措置が外され、通常の土地評価に基づいた高額な税金が課されることになります。最悪の場合、行政代執行により解体費用を請求されることもあるのです。このように、空き家は「持っているだけで負担となる存在」になりかねません。
そうしたなかで注目されているのが、空き家を賃貸物件として再生し、第三者に貸し出すことで収益化を図る「サブリース」という手法です。今回は、サブリースの基本的な仕組みから、メリット・デメリット、代替手段までを段階的に解説していきます。
サブリースとは
サブリースとは、物件所有者が一括して物件を不動産会社に貸し、その不動産会社がさらに入居者に又貸しするという仕組みです。この契約において、オーナー(空き家所有者)は、空室の有無にかかわらず毎月一定額の賃料を受け取ることができるのが最大の特徴です。
この仕組みを理解するには、賃貸運用における役割分担を明確にすることが重要です。サブリース会社は「借主」であると同時に、「転貸人(サブレスター)」として入居者に対して貸し出す立場にあります。つまり、オーナーと入居者の間に直接の契約関係は存在せず、すべてのやり取りはサブリース会社が介在することになります。
図で表すと以下のようになります。

図版出典:株式会社オカムラホーム
空き家はできる限り早く手を打つ必要がある
「親が住んでいた家をそのまま残している」「将来的に使う予定があるかもしれない」「まだ売る決心がつかない」そのような理由から、空き家をなんとなく放置している方は少なくありません。しかし、空き家は“時間が経てば経つほどリスクが大きくなる資産”です。適切な管理や活用をしないままでいると、結果的に多額の出費や法的なトラブルに発展する可能性があります。空き家問題は、個人の所有資産にとどまらず、地域社会や行政にも影響を与える深刻な課題です。
税金
空き家の所有者には、建物が使われていようがいまいが、固定資産税と都市計画税の納税義務があります。住宅用地には通常、固定資産税の軽減措置(いわゆる「住宅用地特例」)が適用されており、小規模住宅用地であれば評価額の6分の1、一般住宅用地であれば3分の1に軽減されます。
しかし、空き家が管理されず老朽化し、自治体によって「特定空き家」に指定されると、この軽減措置が解除されてしまいます。これにより、固定資産税が最大で6倍になるケースもあるのです。
たとえば、これまで年額5万円だった税金が、指定後には30万円に跳ね上がるといったことも起こり得ます。
近隣トラブル
管理されていない空き家は、近隣住民にとって深刻な迷惑の種になりかねません。たとえば庭木や雑草が伸び放題になって境界を越えてしまったり、落ち葉が隣家の敷地に大量に舞い込んだり、敷地内に捨てられたゴミが悪臭を放ったりと、周辺環境に悪影響を及ぼします。
また、放置された家は見た目からして「誰も住んでいない」と一目でわかるため、不審者や空き巣、ホームレスが入り込んだり、放火の対象になったりするケースも報告されています。
特定空き家になると金銭的なリスクが
「空き家対策特別措置法」により、2015年から各自治体には空き家に対する管理・改善の権限が強化されました。段階的な処置は、自治体の判断に基づき行われ、所有者に対して法的責任が課されます。とくに、勧告以降の段階に進んでしまうと、税金の軽減措置の撤廃や建物の強制解体、費用請求といった非常に大きな負担を背負うことになります。
多くの所有者が「まだ大丈夫」「近いうちに何とかする」と思っているうちに、気づけば行政の監視対象となってしまうのです。
空き家サブリースのメリット・デメリット
メリット
安定した収入を得られる
サブリース最大の魅力は、「入居者がいるかどうかに関係なく、毎月一定の賃料収入が保証される」という点です。
通常の賃貸経営では、空室が発生するとその間の家賃収入はゼロになります。空室期間が長引けば長引くほど、修繕費や広告費などの支出がかさみ、オーナーの経済的負担は大きくなります。
一方でサブリースの場合、サブリース会社が一括で物件を借り上げ、オーナーに毎月「保証賃料」として一定額を支払います。これにより空室リスクが実質ゼロとなり、長期的な安定収入が見込めるのです。特に、入居率が低いエリアや、築年数が古く入居者募集に時間がかかる物件には、大きな安心材料となるでしょう。
手間がほとんどかからない
不動産経営には、入居者の募集、契約手続き、家賃管理、クレーム対応、退去後の原状回復など、さまざまな業務が伴います。これらの業務は、慣れていない人にとって大きなストレスとなるだけでなく、時間の負担も大きくなります。
しかし、サブリース契約を結べば、こうした実務的な管理業務はすべてサブリース会社が代行してくれます。オーナーは基本的に「契約書にサインし、毎月家賃を受け取るだけ」で済むのです。
特に、高齢者や多忙な現役世代、複数の不動産を所有している人にとっては、非常に魅力的な仕組みといえます。また、物件が遠方にある場合でも、頻繁に現地に行く必要がないため、物理的な負担も大幅に軽減されます。
トラブルがあってもサブリース会社が対応してくれる
入居者とのトラブルは、賃貸経営における大きなリスク要因のひとつです。たとえば家賃の滞納、深夜の騒音、近隣住民との揉め事、契約違反、設備の故障など、思わぬ問題が発生することは少なくありません。こうしたトラブルが起きた場合、通常の賃貸契約ではオーナー自身が対応する必要がありますが、サブリースであればすべてサブリース会社が責任を持って対応してくれます。法的手続きや交渉、苦情処理なども委託できるため、オーナーとしての精神的負担を大きく減らすことができます。
デメリット
契約中でも賃料が下がる可能性がある
サブリース契約を結んだからといって、賃料が永久に一定というわけではありません。実際には、契約書に「賃料改定条項」が含まれていることが多く、入居者が少ない状況や市場家賃の下落を理由に、サブリース会社から賃料の減額を求められるケースがあります。
また、長期契約であっても数年ごとに見直しが行われることが多く、「当初よりも2割以上下がった」という例もあります。サブリース契約を検討する際は、保証賃料の金額だけでなく、「それがいつまで維持されるのか」「どのような条件で見直しがあるのか」といった内容も確認する必要があります。
礼金や更新料などが受け取れなくなることも
一般的な賃貸契約では、入居時の礼金や契約更新時の更新料がオーナーの収益になります。しかし、サブリース契約ではこれらの費用はサブリース会社が受け取ることが多く、オーナーには支払われないケースがほとんどです。
これは、実際の賃貸借契約が入居者とサブリース会社の間で行われるためであり、オーナーは「一括借上げの賃料」以外の収入を得ることができません。つまり、物件の人気や好立地といった“賃貸競争力”があっても、その恩恵が直接オーナーに還元されるとは限らないということです。
契約期間中は売却や契約解除ができない
サブリース契約には、数年間にわたる「定期借家契約」が結ばれるのが一般的です。この契約期間中は、オーナーが勝手に物件を売却したり、自分で住んだりといった用途変更ができなくなります。
たとえば、「将来的に子どもが住む予定だった」「高齢の親を住まわせるつもりだった」というケースでも、契約満了まではそれができず、柔軟な活用が制限されてしまいます。さらに、売却する際には「サブリース契約が継続中」であることが条件となり、買い手が見つかりにくくなる可能性もあります。
収益が劣る
サブリースは安定した収入が得られる一方で、「収益性の最大化」という点ではデメリットもあります。前述のとおり、保証賃料は市場相場よりも低く設定されるのが一般的であり、礼金や更新料も得られないことを考えると、トータルで見たときの収益性はやや劣るといえるでしょう。
特に、都心部や駅近など、元々需要が高く空室リスクが少ない物件であれば、サブリースよりも自己管理や管理委託による運用のほうが高い利益を得られるケースもあります。安定性と収益性はトレードオフの関係にあることを理解しておく必要があります。
入居者を選べない
サブリース契約では、入居者の選定は基本的にサブリース会社が行います。オーナーが「家族向けに使ってほしい」「ペット不可にしたい」「学生は避けたい」など、入居者層に関して希望があっても、それを直接反映させることはできません。
また、物件の使い方や居住マナーに関するトラブルが発生しても、オーナー側は直接関与することができず、サブリース会社の対応を待つしかないという点も不安材料になり得ます。管理のプロとはいえ、信頼できる会社かどうかを見極めることが重要です。
管理委託契約も検討したい
管理委託契約とは
サブリース以外の選択肢として、管理委託契約という方法があります。サブリースと比べて認知度はやや低いものの、収益性や自由度を重視したいオーナーにとって、むしろこちらの方が適しているケースも少なくありません。
管理委託契約とは、物件の所有者がそのまま大家としての立場を維持しながら、不動産会社に対して賃貸運営の実務(入居者の募集、契約手続き、家賃回収、トラブル対応、修繕手配など)を代行してもらう仕組みです。つまり、サブリースが「一括借り上げ」による完全代行なのに対し、管理委託契約は「業務の外注」に近いイメージです。
この契約の最大の特徴は、「家賃保証がない代わりに、収益性が高く、資産活用の自由度も高い」という点にあります。空室が出れば当然その期間の収入はゼロになりますが、逆に入居者が決まれば、家賃は全額オーナーの収入となります。サブリースでは家賃が2〜3割程度差し引かれることが一般的なので、満室が続けば収益面では明らかに優位に立つのが管理委託です。
また、サブリース契約では長期契約が基本で、契約期間中の途中解約や用途変更には大きな制約がかかります。しかし管理委託契約では、オーナーが「今後は売却したい」「自分の家族が住む予定になった」など、方針を変更した場合でも比較的スムーズに対応できます。これは、資産を長期的にどう活用していくかを柔軟に検討したい人にとって大きなメリットです。
さらに、入居者の選定にも一定の裁量を持てるのも管理委託契約の利点です。たとえば「高齢者や外国人はできるだけ避けたい」「ペット可・不可を明確にしたい」「ファミリー層を優先したい」といった希望があれば、管理会社を通じて入居条件として反映させることが可能です。対してサブリースでは、入居者の募集や選定は基本的にサブリース会社が全て決定するため、オーナーが内容に口を出すことはできません。
ここで、サブリースと管理委託契約の違いを表で整理してみましょう。
| サブリース | 管理委託 | |
|---|---|---|
| 家賃保証 | 空室リスクがない | 空室リスクがある |
| 管理手数料 | 不要 | 必要 |
| 家賃の金額 | 低い | 適正価格 |
| 更新料 | 受け取れない | 受け取れる |
| 礼金 | 受け取れない | 受け取れる |
| リフォーム代金 | 別途発生。 サブリース会社が指定した内容となるため割高になる場合も。 |
別途発生。 最小限のリフォームで抑えることができる。 |
| 建物トラブル | サブリース会社が対応 | 管理会社が対応 |
| 家賃トラブル | サブリース会社が対応 | 貸主が対応 (契約条件により異なる) |
参考:https://homeowner.able.co.jp/article/sublease-and-management-consignment/
まとめ
空き家のサブリース活用は、確かに「手間をかけずに収益化する」方法として非常に有効です。しかし、その一方で、収益性や自由度において制限があることも理解しておく必要があります。
「絶対に損をしない方法」というものは存在しません。空き家を資産として活かすためには、自分にとって何を優先するか(手間・収益・自由度など)を明確にし、それに適した運用方法を選ぶことが大切です。
空き家活用にお困りの方、判断に迷っている方は、「ネクスト・リアルプラン」にご相談ください。




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