
空き家の増加は、景観の悪化や防災・防犯上のリスク、地域コミュニティの衰退といった社会的課題を引き起こします。しかし、視点を変えればこれらの空き家は「資源」として活用できる存在でもあります。特に近年注目されているのが、空き家をテナントとして貸し出したり、シェアスペースとして多目的に運用するという方法です。
本記事では、空き家を活用する新しいアイデアとしてのテナント運用やシェアスペース化について、メリット・デメリット、実際の事例、法的注意点、行政支援の利用方法まで、6つのステップで丁寧に解説していきます。
テナント運用・シェアスペース化のメリット
住宅賃貸以上の収益性が期待できる場合も
空き家をテナントやシェアスペースとして活用する最大の魅力は、活用次第で「収益」と「地域貢献」の両立ができることにあります。単なる住宅として貸し出すのとは違い、空間の使い方に創造性が求められる分、オーナーにとってもより大きなリターンを得られる可能性が広がります。
注目すべきは収益性の高さです。住宅賃貸では周辺の家賃相場に合わせて月数万円程度の収入に留まることが多いですが、テナント運用やシェアスペースとして展開すれば、時間貸しや複数事業者による入居などによって月あたりの収入を倍以上に伸ばすことが可能です。たとえば、1階をカフェ、2階をネイルサロンとシェアオフィスに分けるなど、空間を細分化して収益を最大化する工夫もできます。
物件の特性を活かしたユニークな活用が可能
地域の活性化という副次的なメリットも見逃せません。空き家が店舗や交流拠点として再生されることで、地域住民が集う場所が生まれます。たとえば、平日昼間に閑散としていた商店街に新しいテナントが入ることで人通りが戻り、周辺の既存店舗にも経済効果が波及したという事例もあります。これは、ひとつの空き家活用が「街に灯りを戻す」きっかけになることを意味しています。
多様な人々との交流が生まれる可能性
文化やコミュニティ形成の起点になるケースも増えています。DIYワークショップができる工房型シェアスペースや、地元作家の作品を展示販売するギャラリー型店舗など、地域の人やモノをつなぐ「場」として空き家を再生する動きが各地で広がっています。そこに新しい交流が生まれ、定住促進や若年層の関与も増えていくという好循環が生まれているのです。
デメリットと注意点
空き家をテナントやシェアスペースとして再活用することには多くのメリットがありますが、その一方で事前に理解しておきたい注意点やリスクも存在します。成功を目指すためには、以下のポイントを押さえた上で、丁寧な準備を進めることが不可欠です。
初期投資(改装費など)が住宅賃貸より高額になる可能性
空き家は、老朽化や設備の未整備が進んでいる場合が多く、そのままでは事業用として使うことが難しいケースがほとんどです。店舗やサロンとして運用するには、内装工事、水回りの改修、電気や空調の配線工事、バリアフリー対応などが必要になり、住宅としてのリフォームよりも高額になりがちです。
また、業種によっては厨房設備や業務用エアコン、防火設備など特別な設備投資も発生します。これらの費用は数十万〜数百万円にのぼることもあるため、自己資金だけでなく補助金や融資制度の活用も含めた計画が重要です。
事業計画の策定と集客・運営ノウハウが必要
空き家を活用した事業は、単に「場所を貸す」だけでは成功しません。どのような客層を想定し、どんな商品・サービスを提供するのか、そのために必要な広報・集客手段は何か。こうした事業計画を緻密に立てることが、運営の安定と収益確保につながります。
また、利用者や顧客との関係構築、予約管理、トラブル対応など、実際の運営には多岐にわたるノウハウが求められます。個人で始める場合には、初期段階で経験者のアドバイスや行政・民間サポートの力を借りることも視野に入れておくと良いでしょう。
用途変更や建築基準法などの法規制確認が必須
住宅を事業用に転用する際は、用途変更の手続きや、建築基準法、消防法、風俗営業法など、さまざまな法令の確認と対応が求められます。とくに飲食店や民泊などは、保健所・消防署の許可や届出が必要となるため、事前に自治体に確認することが重要です。
違法に営業を開始すると、後から営業停止や罰則の対象になるリスクもあるため、空き家を借りる段階から専門家(建築士・行政書士・不動産業者など)に相談しながら進めることが安心です。
住宅用とは異なるトラブルリスク
シェアスペースやテナント利用では、住宅用賃貸とは異なる種類のトラブルが発生する可能性があります。たとえば、利用者間のトラブル、時間貸し利用での騒音問題、設備の破損、無断キャンセル、近隣住民との摩擦などです。
こうした事態を未然に防ぐためには、利用規約や賃貸借契約の整備が不可欠です。営業時間、使用目的、キャンセルポリシー、破損・汚損時の対応などをあらかじめ明文化し、場合によってはトラブル時の保険加入や弁護士への相談体制も整備しておくと安心です。
空き家が生まれ変わる多様なテナント・シェアスペース活用事例
【小売・飲食系】地域のにぎわいを生み出す
空き家の中でもとくに活用例が豊富なのが、小売・飲食の分野です。特に立地が人通りのある場所、観光地、駅近であれば、テナントとしての収益化がしやすくなります。
カフェ・喫茶店: 地域住民の憩いの場、こだわりの空間を提供
築年数のある住宅や古民家をリノベーションしたカフェは、地域住民の憩いの場として機能します。天井の梁を見せたり、囲炉裏や土間を活かすことで、チェーン店にはない個性と魅力を演出できます。イベント利用、読書会、朝活など多目的展開も可能です。
ベーカリー・菓子店: テイクアウト中心なら小規模でも可能
工房付きのベーカリーや焼き菓子専門店など、テイクアウトを中心にした店舗運営であれば、小規模な空き家でも実現可能です。地元食材を使った「地域密着型商品」は観光客にも喜ばれます。
雑貨店・セレクトショップ: オーナーのセンスを活かした個性的な店づくり
部屋ごとにテーマを持たせた展示や、アンティーク家具と雑貨を融合させたレイアウトが可能です。住宅構造を活かすことで「家のようにくつろげるお店」という空間がつくれます。
小規模レストラン・バー: 特色ある料理や雰囲気で集客
一日一組の予約制レストラン、シェフが日替わりで入れ替わるバーなど、小規模だからこそ可能な業態もあります。夜間営業に絞ることで、日中は貸しスペースとしても運用可能。
【サービス系】専門スキルを活かす拠点に
個人事業主が一人で開業できる業態は、空き家活用との親和性が非常に高いジャンルです。とくに住宅地では「隠れ家風サロン」「プライベート教室」といった空間づくりに適しています。
美容室・ネイルサロン・エステサロン: 既存の建物の雰囲気を活かした空間づくり
一室だけを改装すれば開業可能。静かな住宅街や自然に囲まれた立地でも、Instagramを活用した予約制運営で集客できます。照明や香りの演出で非日常感を高めるのもポイント。
整体院・マッサージ店: リラックスできるプライベート空間
癒しやリラクゼーションを重視する利用者にとっては、住宅街の静けさはむしろプラス。和室をそのまま活用した施術室や、ウッドデッキ付きのスペースなどの演出も可能です。
学習塾・習い事教室(書道、絵画、音楽など): 地域の子どもや大人の学びの場
英会話、ピアノ、絵画、書道などの個人教室は、自宅開業よりも「きちんとした場」がある方が安心感を与えます。平日の夜間や週末のみの利用でも十分ニーズがあります。
ペットサロン・ペットホテル: ペットフレンドリーな地域なら需要あり
空き家に庭や駐車場があれば、ペット事業の拠点として好相性。小規模なトリミングスペース、ペット一時預かりなど、地域住民の困りごとを解決できる業態です。
【コミュニティ・クリエイティブ系】新たな繋がりと創造の場
空き家を活用することで、単なる店舗やサービス提供の場を超えた、「人がつながり、新しいものが生まれる場所」を創出することも可能です。とくにクリエイターや地域活動家など、フリーランスで活動する人々にとって、拠点となる場所の存在は非常に重要です。
コワーキングスペース: フリーランスやスタートアップ向けの仕事場を提供
コロナ禍以降、リモートワークや副業の拡大により、地方にもコワーキングスペースのニーズが広がっています。空き家の一部を改装して、Wi-Fi、デスク、プリンターなどの設備を整えれば、すぐにでも開業が可能です。地元住民だけでなく、ワーケーションを希望する都市部のビジネスパーソンにも需要があります。
シェアオフィス: 小規模事業者向けの個室・ブース型オフィス
個室やブースを設けたシェアオフィスは、起業初期のフリーランスや小規模事業者にとって理想的な環境です。1階をオープンスペースに、2階を個室に分けるなど、建物の構造を活かした設計ができます。また、法人登記や郵便受取サービスを提供すれば、付加価値も高まります。
レンタルスペース・イベントスペース: 会議、セミナー、ワークショップ、展示会など多目的に時間貸し
使い方は自由自在。ヨガ教室、ワークショップ、ギャラリー展示、会議・セミナー、音楽ライブなど、地域の活動ニーズに合わせて柔軟に対応できます。貸し時間の管理はネット予約システムを活用すれば効率化できます。自治会や子ども会など、地元イベントとの連携で地域貢献にもつながります。
レンタルキッチン・シェアキッチン: 料理教室やお菓子作りの拠点、飲食店開業のテストにも
飲食業を始めたいが、いきなり店舗を構えるのはハードルが高い人たちの第一歩として人気なのがレンタルキッチン。保健所の基準を満たしたキッチン設備を設置すれば、料理教室、ケータリングの準備場、YouTuberの撮影スタジオとしても利用できます。数時間単位での貸出により、効率よく収益を得られます。
アトリエ・工房(陶芸、木工など): クリエイター向けの制作スペース
クリエイターや職人が集中できる空間は、都市部では家賃が高く実現が難しいことも多いですが、空き家を活用すれば広さ・雰囲気ともに理想の「ものづくり拠点」がつくれます。作品の販売スペースを併設したり、制作体験のワークショップを開催したりすることで、来訪者との接点も生まれます。
ギャラリー: アーティストの作品展示スペース
作品展示を目的としたアートギャラリーは、空き家の佇まいを活かすにはぴったりの業態。元・和室や土間、長屋の縁側など、普通の白壁ギャラリーにはない「生活感」や「静けさ」が逆に新鮮です。週末だけの開廊、イベントとの連携、販売収入との組み合わせなど、運用スタイルも自由に設定可能です。
【その他】ニッチな需要に応える
一見ニッチに思えるジャンルでも、地域の潜在的なニーズに合致すれば、十分に成立します。以下のような業態は、大きな設備投資が必要ないため、低リスク・高効率の空き家活用法としておすすめです。
シェア型トランクルーム・貸し倉庫: 地域の収納ニーズに対応
収納に困る人は多いですが、近隣にトランクルームがない地域も多数存在します。空き家の1部屋やガレージを個人・法人に貸し出すことで、倉庫収入を得ることが可能です。月額制で運用すれば、安定した収益源になります。セキュリティや保険の整備は必要ですが、接客が不要なため運営負担が少ないのも利点です。
小規模な宿泊施設(民泊・ゲストハウス): 観光地や特定の許可が得られる場合 ※法規制注意
観光地や交通拠点が近くにある空き家なら、宿泊施設としての活用も有望です。民泊新法に基づいた「住宅宿泊事業」や、旅館業法に基づく「簡易宿所」の許可取得を目指すパターンがあります。とくに、他では体験できない“暮らしの雰囲気”を味わえる空間として人気があり、リノベーションの工夫によって高単価化も狙えます。
ブックカフェ・ライブラリースペース: 静かに過ごせる読書空間
静かな空き家を活かして、読書に集中できる空間をつくるブックカフェやライブラリーも人気です。コーヒーやお茶とともに、選書や空間デザインにこだわることで、来店者が長時間滞在してくれる居心地の良い場になります。小規模でも始めやすく、学習スペースや子ども向け読書会の会場としても応用可能です。
まとめ
空き家は、ただ持て余すだけの“負動産”ではなく、工夫と計画次第で“地域の資産”に生まれ変わる可能性を秘めています。特に、テナント運用やシェアスペース化は、活用の自由度が高く、住宅賃貸よりも高い収益性が見込める方法として注目されています。
もちろん、初期費用の高さや法的制約、運営の難しさといった課題はありますが、これらはしっかりとした準備とサポート体制、そして地域との対話によって乗り越えることができます。
株式会社ネクスト・リアルプランでは、空き家の査定から、テナント運用・シェアスペース化の企画提案、リノベーション、テナント誘致、運営サポートまで、オーナー様の夢を形にするお手伝いをいたします。




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