不動産売買において大きな金額が動くことになりますが、例えば所有する不動産を売却し、買主から手付金を受け取ることもあります。
これは不動産売買に限らず、商品やサービスの提供についても行われますが、代金の一部を内金や手付金として前もって支払ってもらうことにより、安心して取引を続けることができることがメリットです。
ただ、実際に手付金を受け取った場合、会計処理における仕訳はどのように行えばよいのでしょう。
不動産の売主が手付金を受け取ったときの仕訳は?
前もって手付金を受け取った場合には、
借方 : 現預金 貸方 : 前受金
となります。
不動産を引き渡すときに残額を決済することが多いですので、この仕訳の時点では収益は確定していません。
その後、実際に不動産を売却したときには、機首から売却日までの建物の減価償却費の仕訳も必要なので、
借方 : 減価償却費 貸方 : 建物
という仕訳をたてます。
さらに、売却したときには手付金を精算することになるので、
借方 : 前受金 貸方 : 土地
現預金 建物(減価償却費を差し引いた金額)
という形になります。
不動産を購入した買主の仕訳は?
反対に買主側の会計処理は手付金を支払った段階で、
借方 : 前渡金 貸方 : 現預金
となり、
その後、不動産の引き渡しが行われ残りの代金を決済したときには、
借方 : 土地(または建物) 貸方 : 前渡金
現預金
という形で会計処理を行います。
もし残代金を支払えず手付金を放棄する場合は?
後日、資金難などが原因で買主が残りの代金を支払うことができず、手付金を放棄する形で売買契約を解除しなければならなくなったとします。
この場合には、
借方 : 雑損失 貸方 : 前渡金
という仕訳で処理が必要です。
仕訳で用いられる勘定科目の意味
不動産を購入する買主は、事前にその代金の一部を支払うことで後から物件を受け取ることが可能となる権利を得ることができます。
そのため、手付金として支払った金額は前渡金や前払金という流動資産による勘定科目で仕訳をたてて処理を行うことが必要です。
対して不動産の売主の場合、代金の一部を先に受け取ることで、後から物件を引き渡さなければならない義務を負います。
そのため、手付金として受け取った金額は流動負債の勘定科目である前受金を用いた仕訳処理が必要となります。
売主の売上収益の計上は、実際に物件を引き渡したときに行いますので、手付金を受け取った時点で売上として計上するのではなく、手付金は物件を引き渡す日まで負債として計上することになると理解しておきましょう。