
募集を出しているのに問い合わせすら来ない、内見はあるのに申し込みにつながらないという悩みを抱えている方は少なくありません。
空室のままでも固定資産税や火災保険料、維持管理費などの負担は続きます。定期的に窓を開けて換気をしなければ湿気がこもり、カビや木材の傷みにつながることがあります。雨漏りや外壁のひび割れも、日常的に人が出入りしていなければ発見が遅れがちです。庭木が伸びすぎたり、郵便物がたまったりすることで、近隣の方に迷惑をかけてしまう可能性もあります。ただし「決まらない=物件が悪い」とは限りません。
この記事では、空き家を放置するリスクから管理代行サービスの費用相場、依頼先の選び方、契約時の注意点まで解説します。
目次
そもそも「客付け」とは — なぜ空き家は決まりにくいのか
客付けとは、入居者を見つけて契約まで結びつけること
不動産業界で使われる「客付け」とは、入居希望者を見つけ、物件の紹介や内見、条件交渉などを経て、賃貸借契約の成立につなげることです。
単にインターネット上に募集広告を掲載すれば終わりというわけではありません。入居者に物件の存在を知ってもらい、興味を持ってもらい、最終的に契約したいと思ってもらうまでの一連の取り組みが必要です。
客付けの流れは、大きく分けると3段階あります。
最初は、物件情報を入居希望者に届ける段階です。掲載する不動産ポータルサイトや写真、家賃、設備情報などが適切でなければ、条件に合う人に見つけてもらえません。
次は、内見で物件を選んでもらう段階です。写真を見て興味を持った人が実際に訪れても、室内のにおいや湿気、設備の状態などに不安を感じれば、申し込みを見送る可能性があります。
最後は、家賃や契約条件を調整し、契約につなげる段階です。物件を気に入ってもらえても、初期費用や入居条件が希望に合わなければ、成約には至らないことがあります。
戸建ての空き家が決まりにくい、構造的な理由
戸建ての空き家を賃貸に出す場合、アパートやマンションとは異なる特徴を理解しておく必要があります。
賃貸市場では集合住宅が多く、単身者向けのワンルームや少人数世帯向けの物件など、幅広い選択肢が用意されています。一方、戸建て賃貸は物件数や立地によって競合状況が大きく異なります。そのため、戸建てを探している人がどの程度いるのか、近隣に似た条件の物件がどのくらいあるのかを確認することが重要です。
相続した空き家では、築年数が古く、水回りの設備が現在の生活スタイルに合っていないことがあります。また、部屋数が多いために家賃が高くなりやすい、駅から遠い、庭や駐車場の管理が必要といった条件が、入居希望者にとって負担になる場合もあります。
しかし、戸建てには集合住宅にはない魅力もあります。ペットと暮らしたい人、在宅勤務のために仕事部屋を確保したい人、楽器や趣味を楽しめるスペースが欲しい人にとって、戸建ては魅力的な選択肢です。小さな子どもがいる世帯にとっても、隣室や上下階への生活音を気にしにくいことはメリットになるでしょう。
つまり「万人に選ばれる物件」を目指すのではなく「戸建てでなければ困る人」に届けるのが客付けの基本方針です。
| 区分 | 戸数 | 総住宅数に占める割合 |
|---|---|---|
| 総住宅数 | 6,504万7,000戸 | — |
| 空き家(合計) | 900万2,000戸 | 13.8% |
| うち賃貸用の空き家 | 空き家全体の約49% | — |
| うち賃貸・売却用および二次的住宅を除く空き家 | 385万6,000戸 | 5.9% |
※全国の空き家の状況を見ても、賃貸市場には多くの空き家が存在しています。総務省統計局の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年10月1日現在、全国の空き家は900万2,000戸で、総住宅数の13.8%を占めています。空き家全体のうち、賃貸用の空き家は約49%に当たります。
ただし、統計上の賃貸用の空き家が、すべて現在入居者を募集している物件というわけではありません。それでも、空き家を賃貸として活用するには、物件を所有しているだけでなく、地域の需要に合った募集方法を工夫することが重要だといえます。
「決まらない」を3つに切り分ける
空き家の客付けを改善するには、まず現在の募集状況を整理しましょう。問い合わせが来ない場合と、内見後に断られる場合では、必要な対策が大きく異なります。
問い合わせや内見の申し込みがほとんどない場合は、物件情報が十分に届いていない可能性があります。掲載している不動産ポータルサイトが少ない、写真が不足している、設備情報が詳しく記載されていないなど、募集方法に改善の余地があるかもしれません。
問い合わせや内見はあるものの申し込みにつながらない場合は、室内の印象や設備の状態、清掃状況などを見直す必要があります。入居希望者が実際に物件を見たとき、どのような点を気にしているのかを確認しましょう。
また、申し込みや問い合わせはあるものの、家賃や契約条件が合わずに話が流れてしまう場合は、募集条件が地域の市場と合っていない可能性があります。家賃の設定や初期費用、ペットの飼育条件などを検討する必要があります。ただし、問い合わせに関してはあくまで目安になります。地域と時期(1〜3月の繁忙期か、それ以外か)で件数の水準は変わります。
| いまの状況 | 疑われる原因 | 読むべき章 |
|---|---|---|
| 問い合わせ・内見の申し込みがほとんど来ない | ①物件情報が届いていない(掲載媒体・写真・記載内容の問題) | 第2章 |
| 内見はあるが、申し込みにつながらない | ②見てもらった結果、選ばれていない(室内の印象・設備の問題) | 第3章 |
| 申し込みや問い合わせはあるが、条件が合わず流れる | ③家賃や貸し出し条件が市場と合っていない | 第4章 |
| 問い合わせはあるが、入居者を断っている | ④受け入れる入居者の範囲が狭い | 第5章 |
原因① そもそも物件情報が届いていない場合
この章は、診断表の①に当たる方向けの章です。募集を開始しているのに問い合わせがほとんどない場合は、物件の魅力を高める前に、入居希望者に情報が届いているかを確認しましょう。
まず、自分の物件が実際にどう見えているかを確認する
最初は、入居希望者と同じ方法で、自分の物件を検索してみることです。
物件の所在地や家賃帯、間取りなどの条件を設定し、主要な不動産ポータルサイトで検索してみましょう。自分の物件が検索結果に表示されるか、どのような順番で掲載されているか、周辺の競合物件と比較してどのように見えるかを確認します。
管理会社や仲介会社に募集を任せている場合でも、すべての情報が適切に掲載されているとは限りません。複数のポータルサイトに掲載されているか、募集情報が古いままになっていないか、家賃や設備などの条件に誤りがないかを確認することが大切です。
また、管理会社に対しては「募集しています」という説明だけで終わらせず、具体的にどの媒体に掲載しているのか、どのような方法で入居希望者を集めているのかを尋ねてみましょう。掲載先を把握できれば、募集方法を見直すための判断材料になります。
写真が足りない、暗い、生活感が残っている
賃貸物件を探す人にとって、掲載写真は内見するかどうかを判断する重要な材料の一つです。写真が少なかったり、室内が暗かったりすると、実際には使いやすい物件であっても、その魅力が十分に伝わらない可能性があります。
特に相続した空き家では、以前の所有者が使用していた家具や荷物が残っていたり、長期間の空室によって室内が暗く見えたりすることがあります。キッチンや浴室、トイレなどの水回りの写真が不足している場合も、入居希望者が物件の状態を判断しにくくなります。
戸建ての場合は、建物の内部だけでなく、周辺環境の情報も重要です。最寄り駅までの距離や道のり、近隣のスーパー、学校、公園など、日常生活に関わる情報があれば、入居希望者が暮らしを具体的に想像しやすくなります。
記載されている情報が薄い
写真が充実していても、設備や物件の特徴が十分に記載されていなければ、入居希望者が自分の希望条件に合うかどうかを判断できません。
例えば、エアコンや給湯設備、浴室乾燥機、駐車場、インターネット環境などの情報が空欄になっていると、設備条件で物件を絞り込む人の検索結果に表示されない可能性があります。実際に備わっている設備は、正確に記載してもらいましょう。
戸建てならではの魅力も、具体的に伝えることが重要です。駐車スペースが何台分あるのか、庭があるのか、収納がどの程度あるのか、隣家との距離がどのくらいあるのかなど、入居希望者にとって判断材料となる情報を整理します。
【掲載情報セルフチェックリスト】
複数のポータルサイトに掲載されているか
各部屋・水回り・収納・外観・駐車場など、入居判断に必要な場所の写真が掲載されているか
室内の写真が明るいか(照明オン・カーテン全開・晴れた日)
荷物や残置物が写り込んでいないか
間取り図が掲載されているか
設備欄が埋まっているか(エアコン・駐車場・インターネットなど)
駅からの距離、周辺施設の情報が入っているか
掲載内容が実際の物件と一致しているか
原因② 内見はあるのに決まらない場合
内見の申し込みはあるものの、実際に見てもらった後に契約につながらない場合は、物件の情報が入居希望者に届いている一方で、内見時に何らかの懸念が生じている可能性があります。
この場合、内見者がどのような点を気にしているのかを確認することが大切です。
最初の数秒で決まる — におい、暗さ、湿気
長期間空室になっていた家では、換気不足によるこもったにおいや湿気が気になることがあります。所有者が普段から出入りしていない場合、においに気づきにくいこともあるため、内見前に状態を確認しておきましょう。
まず取り組みたいのは、室内の換気と清掃です。内見前には窓を開けて空気を入れ替え、可能であれば定期的に通風を行います。照明の球切れがないかも確認し、室内を適切な明るさに保ちましょう。
また、長期間水を使用していない住宅では、排水口や排水トラップの封水が蒸発し、下水のにおいが上がってくることがあります。
こうした対策は、比較的費用を抑えて実施できるものが多くあります。高額な設備交換や内装工事を検討する前に、清掃・換気・照明など、基本的な状態を整えることから始めましょう。
水回りの状態は、入居判断に影響しやすい項目の一つ
キッチン、浴室、洗面台、トイレなどの水回りは、毎日の生活に直結する設備です。そのため、内見時に設備の古さや使いにくさ、不具合が見つかると、入居希望者が慎重になることがあります。
例えば、和式トイレや古い給湯設備がある場合は、現在の状態や使用できるかどうかを明確に伝えることが大切です。設備が故障している場合は、修理や交換が必要かどうかを確認し、入居後のトラブルにつながらないようにしましょう。
一方で、壁紙や畳などの内装は、必ずしもすべてを新しくすればよいわけではありません。物件全体の状態や家賃とのバランスによっては、多少の古さがあっても入居希望者に受け入れられることがあります。
重要なのは、物件全体を一律にリフォームするのではなく、入居判断に影響しやすい箇所を優先して改善することです。
| 優先度 | 内容 | 入居判断への影響 | 費用感 |
|---|---|---|---|
| 高 | 清掃・換気・におい対策・照明の交換・残置物の撤去 | 非常に大きい | 低 |
| 高 | 和式トイレの洋式化、給湯器やコンロなど生活に直結する設備の不具合の解消 | 非常に大きい | 中 |
| 中 | 浴室・洗面・キッチンの部分的な更新や交換 | 大きい | 中〜高 |
| 中 | エアコンの設置、インターネット環境の整備 | 大きい | 低〜中 |
| 低 | 壁紙・床の全面張り替え、外壁塗装などの見た目の刷新 | 限定的 | 高 |
どこまで直すかは「回収年数」で判断する
空き家の修繕やリフォームを考える際に悩みやすいのが、どこまで費用をかけるべきかという問題です。
入居者を早く見つけたいからといって、多額の費用をかけて全面リフォームをすると、家賃収入で投資額を回収できない可能性があります。そこで、改修によって増える家賃収入をもとに、回収までに何年かかるのかを計算してみましょう。
回収年数は、次の式で概算できます。
回収年数 = 改修にかけた費用 ÷(改修で上がる月額家賃 × 12か月)
例えば、改修に30万円をかけたことで月額家賃が5,000円上がると仮定した場合、年間の増収額は6万円です。30万円を6万円で割ると、単純計算では5年で改修費用を回収できることになります。
ただし、これはあくまで計算例です。実際には空室期間や修繕費、税金なども考慮する必要があり、家賃が想定どおりに上がる保証もありません。
また、何年後に物件をどうする予定なのかによっても、判断は変わります。今後も長期間貸し続けるのであれば、一定の改修費用をかける選択肢もあります。一方、5年後に売却する予定であれば、回収に8年かかる改修は慎重に検討する必要があるでしょう。
相続した空き家では、思い入れから必要以上に修繕費用をかけてしまうこともあります。まずは減点されやすい箇所を優先して直し、投資額を回収できる見込みがあるかを確認してから判断することが大切です。
残置物が残ったまま内見させない
相続した空き家では、以前の所有者が使用していた家具や家電、日用品などが残っているケースがあります。しかし、荷物が多く残った状態では、内見者が部屋の広さや収納の使いやすさを確認しにくく、自分が住む姿も想像しづらくなります。
そのため、賃貸募集を始める前に、残置物を整理しておくことが望ましいでしょう。不要な家具や荷物を撤去するだけでも、室内がすっきりして、物件の状態を把握しやすくなります。
ただし、残っているものをすべて処分すればよいとは限りません。状態のよいエアコンや照明器具などは、設備として残すことで入居希望者にとってのメリットになる場合があります。
残すものと撤去するものを一つずつ確認し、設備として残す場合は、その扱いや使用条件を明確にしておきましょう。特に設備として貸し出すものについては、故障時の修理や交換を誰が負担するのかなど、契約前に整理しておくと安心です。
原因③ 家賃や貸し出し条件が市場と合っていない場合
問い合わせや内見はあるものの、家賃や初期費用などの条件が合わずに契約に至らない場合は、募集条件を見直す必要があります。
まずは周辺の賃貸市場を確認し、どの条件が成約を妨げているのかを把握しましょう。
家賃は「近隣の募集中の物件」ではなく「実際に決まった物件」を見る
家賃を設定する際、インターネット上で近隣の賃貸物件を検索し、同じような間取りや築年数の物件を参考にする方は多いでしょう。
しかし、ポータルサイトに掲載されている家賃は、あくまで貸主が希望している募集価格です。掲載が続いている物件の中には、設定された家賃や条件が市場の需要と合っておらず、入居者が決まっていないものも含まれます。そのため、募集価格だけを見て相場を判断するのは適切ではありません。
本当に参考にしたいのは、近隣で実際に成約した物件の条件です。成約事例を確認すれば、どの程度の家賃や条件で契約が成立しているのかを把握しやすくなります。
ただし、成約価格や契約条件は、一般の所有者が自分で調べるのが難しい場合もあります。管理会社や仲介会社に、近隣の戸建て賃貸の成約事例を確認してもらい、自分の物件と比較することをおすすめします。
また、相続した家には、以前の所有者との思い出が詰まっていることもあります。そのため、物件に対する思い入れから、希望家賃を高く設定してしまう場合もあるでしょう。しかし、賃貸市場で評価されるのは、建物の状態や立地、設備、広さなどと家賃のバランスです。客観的な情報をもとに、適切な条件を検討することが大切です。
家賃を下げる前に検討できる打ち手
家賃が市場と合っていない場合は、賃料そのものを下げる方法があります。一方で、家賃を変更せずに初期費用や契約条件を調整する方法も考えられます。
例えば、礼金をなくす、敷金を減らす、一定期間の家賃を無料にするフリーレントを設定するなどの方法です。入居時に必要な費用が高いことが申し込みの妨げになっている場合は、こうした条件の見直しが有効な選択肢になることがあります。
ただし、どの方法が適しているかは、入居希望者が何を負担に感じているのかによって異なります。家賃が相場より明らかに高いのであれば、賃料そのものを見直す必要があるかもしれません。一方、家賃は周辺相場と同程度でも、初期費用の負担が大きいことが問題であれば、初期費用の調整を検討する余地があります。
| 家賃そのものを下げる | 初期費用や条件で調整する | |
|---|---|---|
| 効果が出る速さ | 比較的早い | 早い |
| 収入への影響 | 入居している間ずっと続く | 基本的に初回のみ |
| 向いているケース | 相場より明らかに高く設定していた場合 | 相場並みだが、決め手に欠けている場合 |
| 注意点 | 長期的な収入への影響を検討する | 実質的な値引きであることに変わりはないため、複数を重ねすぎない |
広告料(AD)という仕組みを知っておく
賃貸仲介の実務では、貸主が仲介会社に支払う費用について「広告料」や「AD」と呼ばれることがあります。募集活動に関連する費用の設定が、仲介会社の営業活動に影響する場合もありますが、広告料を設定すれば必ず入居者が決まるというわけではありません。
不動産会社が受け取る媒介報酬には法令上の上限があり、名目だけで自由に金額を決められるわけではありません。広告料などの費用を検討する際には、その支払いの目的や内容、報酬との関係を仲介会社に確認することが大切です。
特に、長期の空き家など一定の要件を満たす賃貸物件については、2024年7月1日から媒介報酬の特例が施行されています。ただし、適用には要件があるため、具体的な金額や契約方法は物件の状況と契約内容を踏まえて確認する必要があります。
広告料を設定するかどうかは、物件の競争力や募集条件、仲介会社の募集方針などとあわせて検討しましょう。費用を追加する前に、掲載情報や家賃、内見時の状態に改善の余地がないかを確認することも重要です。
貸し方そのものを変える — DIY型賃貸借という選択肢
建物が古く、通常の賃貸住宅として貸し出すためには改修費用がかかりすぎる場合、DIY型賃貸借という選択肢もあります。
DIY型賃貸借とは、借主の意向を反映して室内を改修できるように、貸主と借主の間で改修内容や費用負担、退去時の原状回復などをあらかじめ取り決める賃貸借の方法です。借主が自分の好みに合わせて室内を整えられるため、一般的な賃貸住宅とは異なる需要を取り込める可能性があります。
貸主にとっては、借主との合意によって改修費用の負担を調整できるため、貸し出す前に大規模なリフォームを行わずに募集できる場合があります。ただし、改修内容や費用負担の取り決めによって条件は異なり、長期入居につながるかどうかも一律ではありません。
実際にDIY型賃貸借を行う場合は、借主がどこまで改修できるのか、工事の実施前に貸主の承諾が必要なのか、退去時に原状回復する必要があるのか、改修費用をどのように扱うのかなどを、契約前に書面で明確にしておく必要があります。
国土交通省では、DIY型賃貸借に関する契約書式例やガイドブック「DIY型賃貸借のすすめ」、家主向けの手引きを公開しています。具体的な契約方法を検討する際には、これらの資料を参考にし、不明点があれば不動産会社や専門家に相談しましょう。そのほか、ペットの飼育を認める、事務所としての利用を認める、法人契約に対応する、二人入居を可能にするなど、貸し出し条件を見直す方法もあります。ただし、用途や建物の状況によっては法令上の制限が関係するため、個別に確認したうえで検討することが大切です。
入居者の「間口」を広げる — 不安の正体と、それに対応する仕組み
空き家の募集を続けていても、問い合わせがあるのに契約に至らない場合は、貸主側が設定している入居条件が、結果として対象となる人を狭めていないか確認してみましょう。
断っている層がいないか、いちど整理する
入居希望者が現れているにもかかわらず契約に至らない場合、募集条件によって対象を狭めている可能性があります。
例えば、高齢の単身者、生活保護を受けている方、外国籍の方、連帯保証人を立てられない方などについて、貸主が不安を感じているケースがあります。
その際には、入居希望者の属性だけで判断するのではなく、具体的に何が心配なのかを整理することが重要です。家賃の支払いが継続できるか、入居中に困りごとが起きた場合に相談できる相手がいるか、万一の際に契約や室内の荷物をどのように扱うのかなど、不安の内容によって検討すべき対応策は異なります。
家賃が払われるかという不安 — 家賃債務保証の仕組み
賃貸住宅を貸し出す際、貸主が気にすることの一つが、家賃を継続して支払ってもらえるかという点です。
一般的には、連帯保証人を用意する方法のほか、家賃債務保証会社を利用する方法があります。家賃債務保証会社は、契約内容に応じて、入居者が家賃を支払えなくなった場合などに貸主への支払いを保証する仕組みを提供します。
ただし、保証の範囲や利用条件は会社や契約によって異なります。保証会社を利用すれば、あらゆる費用が必ず保証されるわけではないため、保証の対象となる費用や期間、利用条件などを事前に確認しておくことが重要です。
国土交通省では、家賃債務保証業者の登録制度を設けています。また、住宅の確保に配慮が必要な方が利用しやすい保証サービスに関する認定制度もあります。入居条件を検討する際には、管理会社や仲介会社に、利用可能な保証会社や制度について確認してみましょう。
さらに、生活保護を受けている方については、住宅扶助の家賃を保護の実施機関から家主などに直接支払う「代理納付」という仕組みがあります。改正住宅セーフティネット法に基づく居住サポート住宅では、一定の場合を除き、代理納付を原則とする仕組みも設けられています。
ただし、利用できる制度や適用条件は個別の状況によって異なります。実際に活用する場合は、自治体の担当窓口や管理会社に確認しましょう。
入居中や退去時の対応が不安 — 住宅セーフティネット制度
住宅セーフティネット制度は、高齢者、障害者、子育て世帯、低額所得者など、住宅の確保に配慮が必要な方の住まいを確保するための制度です。貸主が都道府県や政令市、中核市などに登録する「セーフティネット登録住宅」には、住宅の確保に配慮が必要な方の入居を拒まない賃貸住宅として登録する仕組みがあります。
また、2025年10月1日に施行された改正住宅セーフティネット法により、「居住サポート住宅」の認定制度が始まりました。
居住サポート住宅では、大家と連携する居住支援法人などが、入居者への日常的な安否確認や訪問による見守り、生活や心身の状況が不安定になった場合の福祉サービスへのつなぎなどを行う仕組みが整えられています。サポートを担うのは居住支援法人だけではなく、一定の社会福祉法人やNPO法人、管理会社なども含まれます。
貸主にとっては、入居後の状況をすべて自分だけで把握し、対応しなければならないという負担を軽減できる可能性があります。
ただし、セーフティネット登録住宅や居住サポート住宅には、それぞれ登録・認定の要件があります。制度の利用を検討する場合は、自治体の住宅担当課や地域の居住支援法人などに相談し、所有する空き家が対象となるか、どのような支援を受けられるかを確認しましょう。
入居者が亡くなったときの不安 — 残置物の処理に関するモデル契約条項
単身の高齢者などの入居を検討する際、貸主が不安に感じることの一つに、入居者が亡くなった場合の手続きがあります。賃貸借契約をどのように終了させるのか、室内に残された家具や荷物をどのように処理するのかといった問題です。
こうした不安に対応するため、国土交通省と法務省は、2021年6月に「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定しました。
このモデル契約条項は、入居者が亡くなった場合に備えて、賃貸借契約の解除や残置物の処理について、あらかじめ第三者に委任しておく方法などを示したものです。適切に準備することで、万一の際の手続きを事前に整理できる可能性があります。
ただし、このモデル契約条項の使用が義務づけられているわけではありません。また、誰にどのような権限を委任するのか、どのような手続きが必要なのかなど、契約内容には注意が必要です。実際に利用する際は、不動産会社や法律の専門家などに相談し、物件や契約の状況に応じて検討しましょう。
貸主が感じる不安と、対応する仕組み、相談先の入口を整理すると、次のようになります。
| 貸主が感じやすい不安 | 対応する仕組み | 相談先の入口 |
|---|---|---|
| 家賃が支払われないのではないか | 家賃債務保証(登録制度・認定制度がある) | 管理会社・仲介会社 |
| 入居中に何かあっても対応できない | セーフティネット登録住宅/居住サポート住宅(2025年10月〜) | 自治体の住宅担当課・居住支援法人 |
| 入居者が亡くなったときの手続きが不安 | 残置物の処理等に関するモデル契約条項(国土交通省・法務省) | 管理会社・不動産会社・専門家 |
| どこに相談すればいいか分からない | 居住支援協議会(自治体・不動産関係団体・福祉関係者の連携組織) | 自治体の窓口 |
管理会社・仲介会社との付き合い方を見直す
募集方法や物件の状態、家賃などを見直しても入居者が決まらない場合は、管理会社や仲介会社との連携を確認してみましょう。
「募集しています」で終わらせず、数字で聞く
管理会社や仲介会社に募集を任せている場合、定期的に確認したいのが、問い合わせ件数、内見件数、申し込み件数の3つです。
問い合わせがほとんどないのであれば、掲載媒体や写真、家賃、募集条件などに改善の余地があるかもしれません。問い合わせはあるものの内見につながらない場合は、問い合わせ時の説明や条件の伝え方などを確認する必要があります。
内見まで進んでいるのに申し込みがない場合は、室内の状態や設備、家賃とのバランスなどが課題となっている可能性があります。また、申し込み後に契約が成立しないのであれば、初期費用や契約条件など、別の要因を確認することが大切です。
管理会社には、単に「募集していますか」と尋ねるだけでなく、「問い合わせは何件ありましたか」「内見後に断られた理由は分かりますか」「申し込みにつながらない原因として、どのような点が考えられますか」と具体的に聞いてみましょう。
数字と入居希望者の反応を確認できれば、次にどのような対策を取るべきかが明確になります。
一社に任せきりになっていないか
賃貸募集をどのような形で依頼しているかによって、情報共有の範囲や募集活動の進め方は異なる場合があります。
現在の募集方法について、どの不動産ポータルサイトに掲載しているのか、どのような不動産会社に募集情報が共有されているのか、ほかの仲介会社から入居希望者の紹介を受けられる状態になっているのかを確認してみましょう。
ただし、募集の依頼方法や契約形態にはそれぞれ特徴があり、単純にどれが優れていると断定することはできません。契約内容を確認し、物件の状況や募集方針に合った方法を選ぶことが重要です。
情報の共有範囲や募集活動の状況が分からない場合は、管理会社に説明を求め、必要に応じて契約内容や募集方法を見直すことも検討しましょう。
戸建て・空き家の扱いに慣れている会社かどうか
戸建て賃貸の客付けでは、集合住宅とは異なる需要や物件の特徴を理解していることが重要です。
アパートやマンションの仲介を中心とする会社と、戸建て賃貸や相続した空き家の取り扱い経験が多い会社では、入居希望者へのアプローチや募集方法に違いがある場合があります。
例えば、ペットとの暮らしを希望する世帯や、在宅勤務のために部屋数を求める世帯など、戸建てならではの需要を踏まえて募集条件を検討できる会社であれば、物件の特徴を生かした提案を受けられる可能性があります。
会社を選ぶ際には、戸建て賃貸の取り扱い実績や、近隣での成約事例を確認してみましょう。また、募集活動の状況を具体的に説明してくれるか、修繕や家賃設定について費用対効果を踏まえた提案をしてくれるかも判断材料になります。
それでも決まらないときの選択肢
募集情報や室内の状態、家賃、契約条件などを見直しても入居者が決まらない場合は、居住用の賃貸住宅として貸す方法だけにこだわらず、別の活用方法も検討してみましょう。
住まい以外の使い方を検討する
空き家の立地や間取り、建物の状態によっては、居住用以外の用途で需要が見込める場合があります。
例えば、立地や建物の条件が合えば、事務所や店舗、倉庫・保管スペース、シェアスペースとしての活用が考えられます。また、法人の社宅として一括で貸し出す方法も選択肢の一つです。
ただし、どの用途でも自由に利用できるわけではありません。用途地域や建築基準法、消防法、自治体の条例などによって、利用方法や必要な手続きが制限される可能性があります。建物の用途変更が必要になる場合や、設備の改修が求められる場合もあります。
そのため、用途を変更する前には、自治体の担当窓口や専門家に相談し、利用できる条件を確認することが大切です。
貸す以外に切り替える判断ライン
空き家の賃貸募集を続けても改善が見られない場合は、売却や解体、空き家バンクへの登録など、貸す以外の選択肢も検討する段階に入ります。
判断する際には、空室期間中に発生している費用を具体的に洗い出してみましょう。固定資産税や火災保険料、建物の管理費、光熱費の基本料金などは、入居者がいなくても発生することがあります。さらに、今後必要になる修繕費や募集費用も考慮する必要があります。
例えば、今後も修繕費がかかる見込みがある一方で、周辺の賃貸需要が少なく、家賃収入で費用を回収することが難しい場合は、売却などの方法を検討する価値があります。一方、多少の改善によって入居が見込めるのであれば、必要な修繕を行って募集を続ける選択肢もあるでしょう。
大切なのは、いつまで募集を続けるのか、どのような状況になったら別の方法に切り替えるのかを、あらかじめ決めておくことです。一定期間募集しても問い合わせや内見の状況に改善が見られなければ、貸す以外の選択肢も含めて見直すなど、判断の時期を設定しておくと、方針を先送りにしにくくなります。
空き家の活用方法は、建物の状態や立地、所有者の今後の予定によって異なります。賃貸だけでなく売却や別の活用方法も含めて比較し、自分にとって無理のない選択をすることが重要です。
まとめ — 原因を切り分けてから手を打つ
なかなか入居者が決まらない空き家の客付けを改善するには、まず、どの段階で募集が止まっているのかを把握することが重要です。問い合わせが来ないのであれば募集情報の届け方を、内見後に決まらないのであれば室内の状態や設備を、条件が合わずに契約に至らないのであれば家賃や契約条件を見直しましょう。
また、入居条件を広げる際には、家賃の支払いや入居後の対応など、貸主が感じている不安を整理し、家賃債務保証や住宅セーフティネット制度などの仕組みを活用できないか検討することも大切です。
原因が分からないまま全面リフォームを行ったり、安易に家賃を下げたりすると、費用をかけても十分な効果が得られない可能性があります。まずは問い合わせ・内見・申し込みの件数を確認し、管理会社や仲介会社と連携しながら、必要な対策を順番に進めていきましょう。
ネクスト・リアルプランでは、埼玉県川口市周辺の不動産について、戸建てや空き家の活用、売却なども含めたご相談を承っています。空き家の募集を続けているものの入居者が決まらない場合や、今後どのように活用すべきか判断に迷っている場合は、まずは現在の状況を整理することから始めてみませんか。
物件の状態や地域の事情を踏まえ、どこで客付けが止まっているのか、その見極めからお手伝いします。空き家の今後についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 募集を始めてどのくらい決まらなければ、見直すべきですか?
A. 一律の基準はありません。地域・時期・家賃・物件条件によって異なるため、問い合わせ・内見・申し込みの件数を管理会社や仲介会社に確認し、同条件の物件と比較して判断してください。
Q. リフォームしないと貸せませんか?
A. 必ずしもそうとは限りません。清掃や換気、設備の不具合の解消といった費用の小さい対応で改善するケースもあります。
Q. 家賃はどのくらい下げればいいですか?
A. 下げ幅を決める前に、近隣で実際に成約した物件の条件を確認してください。初期費用の調整で対応できる場合もあります。
Q. 高齢の方の入居が不安です。
A. 家賃債務保証やセーフティネット登録住宅、居住サポート住宅、残置物処理に関するモデル契約条項などの仕組みがあります。利用できる制度・契約方法はケースによって異なるため、管理会社や自治体の窓口にご相談ください。
Q. 荷物が残ったままでも募集できますか?
A. 募集自体は可能ですが、内見での印象に影響します。撤去するもの、設備として残すものを整理することをおすすめします。




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