
埼玉県は全国で最も空き家率が低い県として知られています。しかし、それは空き家が少ないという意味ではありません。実際には利用されずに放置される空き家は増加傾向にあり、とくに川口市やさいたま市では県内でもトップクラスの空き家数となっています。
また、川口市やさいたま市をはじめとした自治体では、解体費用や耐震改修、相談窓口などさまざまな支援制度が用意されています。ただし、その内容は自治体ごとに大きく異なり、埼玉県だから同じ制度が使えるというわけではありません。
この記事では、令和5年住宅・土地統計調査をもとに埼玉県の空き家事情を整理するとともに、川口市・さいたま市の支援制度の違いや活用方法を分かりやすく解説します。
目次
データで見る埼玉県の空き家事情
ここでは、データでみる埼玉県の空き家事情についてご紹介します。
空き家率は全国一低い9.3%(でも安心はできない)
「埼玉県は空き家が少ない県」という話を聞いたことがある方も多いでしょう。
実際に総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、埼玉県の空き家率は9.3%となっており、全国平均の13.8%を大きく下回り、全国で最も低い水準となっています。
平成30年調査では10.2%だったため、5年間で0.9ポイント改善しました。
東京都心へ通勤する人が多く、住宅需要が安定していること、新築住宅の供給も継続していることなどが、この数字を支えています。
しかし、この数字だけを見ると「埼玉県には空き家問題がない」と誤解してしまいます。
実際には空き家の数そのものは約33万戸存在しており、多くの住宅が活用されないまま残っています。
つまり、実際に管理が必要な空き家は非常に多いというのが現状なのです。
増えているのは「放置される空き家」
特に注目すべきなのが、「その他の住宅」と分類される空き家です。
これは賃貸用でも売却予定でもなく、別荘でもない、利用目的のない住宅を指します。
一般的には「放置空き家」と呼ばれることが多く、相続後に誰も住まなくなった実家などがこの区分に含まれます。
令和5年調査では、この「その他の住宅」は埼玉県内で約13万6,000戸となり、住宅全体の3.8%を占めています。
しかも、前回調査より戸数・割合ともに増加しました。
つまり、空き家率は改善しているにもかかわらず、放置される住宅は増えているという、一見矛盾した状況が起きているのです。
川口・さいたまは空き家の“数”が県内トップ
埼玉県内を市町村別に見ると、空き家数が最も多いのはさいたま市です。約5万6,500戸もの空き家があり、県内で突出しています。
次いで川口市が約2万4,410戸、川越市が約1万5,840戸と続きます。
放置空き家だけで見ても、さいたま市は約2万100戸と県内最多となっています。
一方で、川口市は空き家総数こそ多いものの、「その他の住宅」の割合は約1.0%と県内で最も低い水準です。
つまり川口市では空き家は多いものの、比較的市場で流通している住宅が多く、放置される割合は少ないという特徴があります。
▼埼玉の空き家データ早見表
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 総住宅数 | 約355.5万戸 |
| 空き家数 | 約33.0万戸 |
| 空き家率 | 9.3%(全国最低) |
| 全国平均 | 13.80% |
| 放置空き家(その他の住宅) | 約13.6万戸 |
| 放置空き家率 | 3.80% |
| 調査 | 令和5年住宅・土地統計調査 |
▼市町村別 空き家数ランキング
| 順位 | 自治体 | 空き家数 |
|---|---|---|
| 1位 | さいたま市 | 約56,500戸 |
| 2位 | 川口市 | 約24,410戸 |
| 3位 | 川越市 | 約15,840戸 |
※放置空き家数はさいたま市が県内最多。
なぜこのエリアで空き家活用が重要なのか
ここでは、なぜこのエリアで空き家活用が重要なのかについてご紹介します。
都心アクセスがよく「土地に需要がある」エリア
埼玉県、とりわけ川口市やさいたま市は、東京都心へのアクセスが良く、住宅需要が安定しているエリアです。JR京浜東北線や埼京線、武蔵野線など交通網が充実しており、通勤・通学の利便性が高いことから、ファミリー層や単身者まで幅広い賃貸需要があります。
放置より活用・売却が有利な理由
空き家を放置するよりも、売却や賃貸、リノベーションなどの形で活用したほうが資産価値を維持しやすくなります。建物は使われない期間が長くなるほど老朽化が進み、雨漏りやシロアリ被害、設備の故障などによって修繕費が増える可能性があります。
適切な管理が行われない空き家は、景観の悪化や防犯上の問題、近隣住民とのトラブルを招く原因にもなります。
放置し続けるリスク(特定空家・税・近隣トラブル)
倒壊の危険性などがあると自治体から「特定空家(倒壊や衛生上の問題などにより管理不全と判断された空き家)」に指定される場合があり、その結果、「住宅用地特例」が外れると固定資産税の軽減措置が受けられなくなる可能性もあります。
埼玉県・市町村の空き家支援制度の全体像
ここでは、個別制度に入る前の埼玉県・市町村の空き家支援制度の全体像をご紹介します。
支援は「県」と「市町村」の二層構造
まず知っておきたいのは、住民が直接利用する補助金や相談制度の多くは、市町村が窓口になっているということです。
埼玉県は、市町村が行う空き家対策を支援する立場にあり、制度づくりや情報提供、広域的な施策を担当しています。一方、実際に補助金を申請したり、相談窓口を利用したりする場合は、川口市やさいたま市など、それぞれの市役所が窓口となります。
つまり、「埼玉県に住んでいるから同じ制度が使える」というわけではなく、市ごとに制度内容や補助額、対象条件が異なる点を理解しておくことが重要です。
支援は大きく「解体・改修・活用・相談」の4方向
空き家支援というと「解体費用の補助」をイメージする方が多いかもしれません。しかし、実際には支援内容は大きく4つに分類できます。
一つ目は、老朽化した住宅を取り壊すための解体です。倒壊の危険がある住宅や管理が困難な建物について、解体費用の一部を補助する制度が設けられている自治体があります。
二つ目は改修です。耐震改修やバリアフリー化、省エネ改修、リフォームなどを対象とする補助制度で、住宅を再び活用できる状態へ整えることを目的としています。
三つ目は活用です。空き家を賃貸住宅や店舗、地域交流施設へ転用する場合や、移住・定住促進と組み合わせた補助制度などがこれに当たります。
そして四つ目が相談です。専門家による無料相談会や空き家バンク、相続相談、活用方法のアドバイスなど、お金の補助だけではなく「何から始めればいいか分からない」という人を支援する仕組みも充実しています。
空き家活用は補助金だけが選択肢ではありません。まず相談し、自分に合った活用方法を見つけることも大切な支援の一つなのです。
まず調べるべき公的な入口(県の窓口・空き家バンク)
制度を調べる際には、まず埼玉県の「県内空き家の現状」「空き家対策」のページを確認しましょう。県全体の取り組みや市町村へのリンクが整理されています。
そのうえで、自分の住んでいる市町村の公式ホームページを確認すると、その自治体で利用できる補助金や相談制度を見つけることができます。
また、空き家バンクを運営している自治体では、空き家の売却や賃貸を希望する所有者と利用希望者を結び付ける制度も用意されています。
補助金だけでなく、こうした制度も活用することで、空き家をより有効に活かせる可能性があります。
▼支援の4タイプ整理表
| 支援内容 | 主な内容 | 主な窓口 |
|---|---|---|
| 解体 | 老朽空き家の除却費補助 | 市町村 |
| 改修 | 耐震・リフォーム・省エネ改修 | 市町村 |
| 活用 | 空き家バンク・賃貸・店舗活用・移住促進 | 市町村 |
| 相談 | 無料相談・専門家紹介・相続相談 | 県・市町村 |
【川口市】の空き家支援制度
川口市では、空き家対策の中でも老朽化した空き家の解体支援に力を入れています。
建物を安全に管理できなくなった場合、そのまま放置すると倒壊や近隣への被害につながる恐れがあります。そのため、一定の条件を満たす空き家については、解体費用の一部を補助する制度が設けられています。
川口市空家除却補助金(解体費の補助・上限100万円)
この制度では、対象工事費の5分の4、または床面積1㎡につき2万5,000円を基準として算出した額のいずれか低い額が補助され、補助上限額は100万円となっています。
解体工事は数百万円規模になることも珍しくありません。そのため、この制度を利用できれば所有者の経済的負担を大きく軽減できます。
対象になる空き家・ならない空き家
すべての空き家が対象になるわけではありません。
例えば、市の調査で不良住宅と判断された建物や、耐震性が不足しており、接道条件などの理由から建て替えが難しい空き家など、一定の条件を満たす必要があります。
つまり、「古い家だから利用できる」という単純な制度ではなく、安全性や周辺環境への影響などを総合的に判断したうえで対象が決まります。
申請の流れと注意点(着工前・市内業者・年度予算)
特に注意したいのが、必ず交付決定を受けてから工事を開始するという点です。施工業者についても、市内に本社を置く事業者が対象となるなどの条件があります。
さらに、制度には年度ごとの予算があるため、受付期間内であっても予算がなくなれば終了することがあります。
そのため、利用を考えている場合は早めの相談がおすすめです。
▼川口市空家除却補助金の要点表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助対象 | 老朽化した空き家の解体 |
| 補助率 | 対象工事費の5分の4 |
| 上限額 | 100万円 |
| 施工条件 | 市内業者が施工 |
| 注意点 | 着工前申請・年度予算あり |
| 相談窓口 | 川口市住宅政策課住宅管理促進係 |
川口市空家除却補助金は、年度によって募集が行われない場合があります。制度の実施状況や受付期間は毎年度見直されるため、申請前には必ず川口市公式ホームページで最新情報を確認してください。
【さいたま市】の空き家支援制度
川口市が解体補助を中心としているのに対し、さいたま市は相談体制の充実と耐震化支援に重点を置いています。この違いを理解することが、この記事で最も重要なポイントです。
解体単独の補助は原則なし、耐震建替えなら対象
さいたま市では、土地を売却するためだけの解体費用を補助する制度は原則として設けられていません。
一方で、耐震(既存建築物の耐震補強・建替え等)が絡む場合に制度を利用できます。昭和56年5月31日以前に建築された住宅などで、耐震診断の結果、安全性に問題があると判断された建物については、耐震改修や建て替えに伴う除却費用を支援する制度があります。
所管は建築総務課・各建設事務所の建築指導課となっております。
特徴は「ワンストップ相談窓口」(市内7か所)
さいたま市の大きな特徴は、市内7か所に設置されているワンストップ相談窓口です。
さいたま市は公益法人やNPOと協働し、相続・売却・賃貸・管理などをワンストップで相談できる窓口を市内7か所に設置しています。
補助金より相談体制が強いという特徴があります。
民間連携サービス・セミナー
埼玉りそな銀行と連携した「空き家まるごと解決システム」の紹介や相続・空き家セミナー・個別相談会も実施しています。
補助金以外に知っておきたいお金の話
空き家活用では「補助金がもらえるかどうか」に目が向きがちですが、実際には税制を理解することも同じくらい重要です。
補助金は工事費などの一部を支援してくれる制度ですが、税制優遇は「支払う税金を減らす」制度です。金額によっては補助金以上のメリットになることもあるため、ぜひ知っておきたいポイントです。
空き家の3,000万円特別控除(譲渡所得)
相続した実家を売却する予定がある場合には、「空き家の3,000万円特別控除」が利用できる可能性があります。
これは、一定の条件を満たした空き家を売却した際、譲渡所得(売却益)から最大3,000万円を控除できる制度です。
例えば、相続した実家を売却して利益が発生した場合、本来であれば譲渡所得税が課税されます。しかし、この制度を利用できれば課税対象となる所得を大きく減らせるため、税負担を軽減できます。
ただし、誰でも利用できる制度ではありません。
制度の適用可否によって手元に残る金額が大きく変わる場合もあるため、売却を検討している方は事前に確認しておくことが大切です。
解体後の固定資産税の注意(住宅用地特例が外れる)
住宅が建っている土地には、住宅用地特例という固定資産税の軽減措置が適用されています。
この住宅を取り壊して更地にすると、この特例が適用されなくなり、翌年度から土地の固定資産税が高くなる場合があります。
もちろん、老朽化が進み危険な建物であれば解体したほうが良いケースもありますが、税金が安くなると思っていたら逆だったということも少なくありません。
そのため、解体を決める前には、固定資産税への影響や売却・活用の可能性も含めて総合的に判断することが重要です。
まず何から始める?エリア別・行動ステップ
空き家活用で大切なのは、いきなり工事や売却を進めることではなく、自分の状況に合った情報収集から始めることです。
川口市の人/さいたま市の人/その他県内の人
川口市・さいたま市・その他の埼玉県内では、最初に相談すべき窓口が少し異なります。
川口市の方は住宅政策課へ事前相談、さいたま市の方はワンストップ相談窓口へ、その他県内の方は県ページと市町村の空き家バンクから相談するのがよいでしょう。
▼エリア別・行動フローチャート
| あなたの空き家はどこ? | 最初の行動 |
|---|---|
| 川口市 | 住宅政策課へ相談 |
| さいたま市 | ワンストップ相談窓口を利用 |
| その他埼玉県内 | 市町村公式サイト・空き家バンクを確認 |
まとめ:地元に強い相談先を持っておこう
埼玉県は全国で最も空き家率が低い県ですが、放置された空き家は年々増加しています。特に川口市やさいたま市では空き家の総数が多く、それぞれ異なる支援制度が整備されています。
川口市では老朽空き家の解体支援が充実している一方で、さいたま市では相談体制や耐震建て替え支援が中心となっており、同じ埼玉県内でも制度の特徴は大きく異なります。
また、補助金だけでなく、3,000万円特別控除などの税制優遇や、空き家バンク、専門家相談なども上手に活用することで、より有利な選択ができる可能性があります。
ネクスト・リアルプランでは、埼玉県内の空き家活用について幅広くサポートしています。まずはお気軽にご相談ください。専門スタッフが地域事情や制度を踏まえながら、一人ひとりに合った活用方法をご提案いたします。




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