2018/04/19
もし実家で生活している親が老人ホームなど介護施設に入所したことで、誰も住まない空き家になってしまった場合、実家を売却するのか、いずれ帰って来るかもしれないのでそのままにするのか、それとも賃貸物件として活用するのかなど、検討することになるでしょう。
住民票などはそのままにしておいて良いのか、売却するのか相続までそのままにするのかなど、総合的に判断していくことが必要です。
相続が発生するまで売却はしないほうが良い?
誰も住まない状態で置いておくよりは、いっそ売却したほうが良いと考えるかもしれません。しかし相続税対策から考えた場合、相続が発生するまでは売却しない方が良いとも考えられます。
相続税においての不動産の評価方法は、土地は路線価評価額、建物は固定資産税評価額をもとにして計算します。この相続税を算出する際のもととなる額は、時価相場よりもかなり安くなることが多いからです。
貸家・貸家建付地ならさらに評価が減額!
さらにそれが人に貸している土地や建物など、貸家・貸家建付地の場合は、評価が減額されます。
建物は借家権割合(30%)の評価減、土地は「借地権割合(60~70%)×借家権割合(30%)」の評価減となるので、建物は固定資産税評価額の7割、土地は路線価評価を基準にした額の8割となり、相続財産が少なく評価されることで相続税対策には有効と判断できます。
小規模宅地の特例は適用させることが可能?
また、「小規模宅地の特例」を適用させたい場合には、賃貸として利用せず空き家のままにしたほうが良いケースもあります。
「小規模宅地の特例」は、要件を満たすことで一定面積までは80%まで減額評価されますが、誰が実家を相続するのか、相続人がマイホームを所有しているのかなどが関係するため、確認した上で判断する必要があります。
なお、今回のケースでは「家なき子特例」を利用して小規模宅地等の特例を使うことができます。
通常、小規模宅地等の特例は相続人が同居していたかなども要件に含まれますが、亡くなった人に配偶者も同居している相続人もいない場合、3年以上対象となる実家に住んでいない親族が相続しても「家なき子特例」が適用されることで8割減額されます。
仮に売却した時に3,000万円控除は利用できる?
実家を売却する場合、3,000万円控除という軽減措置がありますが、これは売却による譲渡益が出た場合にも3,000万円は差し引いて計算しても良いという制度です。
ただしここで問題になるのは、親の実家が空き家となっている状態で居住用財産であると税務署が判断するかでしょう。
生活の拠点として利用している家屋であることが1つの目安になるため、老人ホームなどに入所した場合には生活の拠点であると判断される可能性があります。
そうなると売却時においては不利な状態となり、住民票を移さずにそのまま実家にしておいても実態調査から否認される事もある様です。
相続後に3,000万円の特別控除を使うなら?
相続してから3,000万円の特別控除を使うことを検討するなら、次の条件を満たさなければなりません。
・実家が昭和56年5月31日以前に建築された物件であること
・亡くなった親は1人で住んでいたこと
・一定の耐震基準になるためのリフォームを行う、または取り壊して売却すること
・売却代金が1億円以下になること
など、要件が色々あります。
このようにどのケースが最も得なのかを総合的に判断することになりますので、安易に決めてしまうのではなく、専門家などに相談した上で解決していくことが望ましいと言えるでしょう。